肩こり、花粉症が改善! 知られざる「鼻うがい」の効果とは…「喉うがいよりも効果的」

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儲からない治療法

 この治療法が広まらなかった理由の一つには、専門分野が細分化された医療の世界の特徴が挙げられます。慢性上咽頭炎の治療は耳鼻科の専門領域ですが、二次疾患は必ずしも耳鼻科の専門ではありません。従って、二次疾患が改善したところで耳鼻科の医師はそれに気が付きませんし、二次疾患の方の専門医もまさか原因が上咽頭にあるとは思わないのです。そうして、慢性上咽頭炎と全身の不調の関係が見過ごされてきたのではないかと思います。

 もう一つの理由は、この治療法の診療報酬が非常に低いということです。慢性上咽頭炎の処置料は3割負担で400円程度。使用する塩化亜鉛も安価で、耳鼻科で塩化亜鉛を塗布するだけなら、患者さんの負担は非常に安く済みます。ところが、医療機関側にとってみれば経営的には全く魅力がありません。皆さんは“医者は儲かる”というイメージをお持ちかもしれませんが、実際は、従業員への支払いや医療機器、備品の購入など出ていくお金も多いのです。そういった医療機関からすれば、EATは積極的に導入したい治療法とはいえない現実もあるのです。

近年は実施する病院が増加

 とはいえ、EATの高い治療効果により、近年は実施する病院も増えてきています。10年ほど前、私が調べた限りでEATを実施している医療機関は全国で20カ所程度に過ぎませんでしたが、現在では大学病院を含む500以上の病院や医院でEATが実施されています。

 19年には日本口腔・咽頭科学会内に上咽頭擦過療法検討委員会が発足しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の後遺症の有効な治療法として注目されるなど、EATを取り巻く環境はこの十数年で様変わりしました。慢性上咽頭炎とその治療法が医学の教科書に掲載される日もそう遠くないのではないかと思います。

 EATを実施している医療機関は「認定NPO法人日本病巣疾患研究会」のホームページで簡単に調べることができます。鼻や喉の疾患だけでなく、長引く疲労感や一生付き合わなくてはならないような免疫疾患に悩んでいる方は、一度、EATを実施している医療機関を訪ねてみるといいでしょう。

堀田 修(ほったおさむ)
堀田修クリニック院長・腎臓内科医。1957年愛知県生まれ。防衛医科大学校卒業、医学博士。「日本病巣疾患研究会」理事長。2001年にIgA腎症の根治治療である「扁摘パルス療法」を米国医学誌に発表。著書にベストセラーとなった『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』や『鼻うがい健康法』がある。今月末に新刊『慢性疲労を治す本』が発売予定。

週刊新潮 2024年5月23日号掲載

特別読物「『頭痛』『肩こり』『疲労』『アトピー』から『腎臓病』まで 知られざる『万病の元』とは!? 『慢性上咽頭炎』に効く『鼻うがい』」より

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