水原一平事件でクローズアップされた大谷翔平の英語力 「無理して喋るのは得策でない」という背後にアメリカ特有の考え方が

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日韓の通訳が優先された理由

「メジャーリーグには中南米出身の多数の選手が在籍しています。流暢な英語を話す選手もいますが、苦手にしている選手も少なくありません。後者の選手とはスペイン語の通訳が行動を共にします。試合後のインタビューで中南米の選手の横に通訳が立っているのはよくある光景なのです」(同・友成氏)

 興味深いことに、メジャーリーグにおける通訳の歴史を遡ると、日本語と韓国語の通訳が優先されてきたという。

「中南米の選手はマイナーリーグからメジャーリーグに這い上がってきた選手が多いので、マイナー時代に英語を使ったことがあります。メジャーでもスペイン語を話すチームメイトは少なくないので、いざとなったら翻訳を頼めます。ところが、日本と韓国の選手は即戦力として入団し、開幕からスタメン入りします。マイナーで必死に英語を使った経験はありません。おまけに、チームではたった1人のアジア系選手ということが珍しくないので、周囲に日本語を話す同僚もいないのです」(同・友成氏)

 中南米の選手には球団も「まあ、英語で何とかなるだろう」と思ってきた。一方、日韓の選手はそういうわけにもいかず、通訳を雇用するようになった。

イメージ戦略の重要性

「そのためメジャーの各球団では、日本語と韓国語の通訳は当たり前となっても、スペイン語の通訳はいないという時代があったのです。それが2000年代の後半くらいから、中南米の選手が『自分たちにもスペイン語の通訳をつけてほしい』と要望するようになり、それが認められたという歴史があるのです」(同・友成氏)

 今後は大谷の英語を楽しみにする日米の野球ファンも増えるだろう。しかし、世界でもトップクラスの多民族国家であるアメリカには、日本人には想像もできないような「独自ルール」があるという。

「ポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)の観点から、『英語を母語としない外国人選手に対し、英語の使用を強制するのは人種差別だ』という意見もアメリカでは根強いのです。この意見に立てば、大谷選手は日本人なのですから日本語で受け答えするのは当然ということになります。『通訳なしで英語を話したほうがいい』との一方的な要求は多様性の観点から問題だという考えです」(同・友成氏)

「英語ができたほうが危機管理につながる」という意見も、「英語を強制するのは人種差別だ」という意見も、今のところアメリカでは共に「正論」と見なされているようだ。

「大谷サイドにとってはどちらかに偏るのは、イメージ戦略上、得策ではないでしょう。ドジャースの広報担当や大谷選手は、世論の動きを注視しながら、時には英語で話したり、時には日本語で答えたりと、調整しながら取材に応じたり、発信をしたりするのではないかと思います」(同・友成氏)

デイリー新潮編集部

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