水原一平事件でクローズアップされた大谷翔平の英語力 「無理して喋るのは得策でない」という背後にアメリカ特有の考え方が

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 日本時間の4月15日、ドジャースは地元のドジャー・スタジアムでパドレスと対戦した。ドジャースの大谷翔平は「2番・DH」でスタメン出場し、スポーツ専門テレビ局のESPNが全米中継を行った。その試合前、大谷がESPNのコーナーに出演し、日米の野球ファンが盛り上がるという珍しい出来事があった。

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 選手が使用する野球用品を紹介するコーナーに大谷が登場すると、彼の横には通訳が立っていなかったのだ。そしてESPNの解説担当者がスパイクについて説明してほしいと英語で依頼し、大谷は流暢な英語でリクエストに応えた。

 これにESPNの実況担当者は「英語が上手だ」と感心。さらに、ESPNがXなどのSNSで動画を公開したため、英語で「もう通訳はいらないじゃないか」などと歓迎する意見が殺到した。

 思い出すのは、大谷が3月26日に開いた会見だ。元通訳の水原一平容疑者による違法賭博への巨額な不正送金について「自分はスポーツ賭博に関係していない」などと身の潔白を主張した。

 その際、大谷は日本語で声明を発表し、それを通訳が英語に翻訳した。その結果、アメリカの一部のメディアは「大谷が英語を話せないため、水原容疑者が“暴走”したのではないか」との記事を配信した。

 ESPNの中継で大谷は英語で質問に応じたため、「英語が話せないのは問題だ」という批判の声は封じ込めることができた。メジャー研究家の友成那智氏は「タイミングの絶妙さを考えると、大谷サイドやドジャースの広報担当が批判的な世論を沈静化させるためにESPNで英語を話させた可能性が高いと思います」と指摘する。

中南米選手と通訳

 友成氏は「改めて考えると、これまで日本人のメジャーリーガーは公の場で英語を話すことを少し避けすぎたのかもしれません」と言う。

「もちろん苦手な選手が無理をする必要はありませんが、松井秀喜さんやイチローさんはかなり上手だと言われてきました。堂々と英語で話していたのは長谷川滋利さんぐらいでしょう。ちなみに、現役ではダルビッシュ有さんが英語でインタビューに応じており、なかなか上手です。一方、日本人のサッカー選手は英語やドイツ語などで取材に応じますし、モンゴル人の力士も日本語が流暢です。水原容疑者の違法賭博事件は、図らずも日本人メジャーリーガーが英語を話す重要性を浮き彫りにしたと思います」

 英語が上手なら周囲とのコミュニケーションも充実するだろう。弁護士や会計士などとの円滑な意思疎通も期待できる。英語を話すことは危機管理にもつながる──こんな世論は日米両国で少なくない。友成氏は「大谷選手が英語を話す機会は、今後はもっと増えるでしょう」と予測する。

 とはいえ、今後、大谷の横に通訳が立てば、たちまちイメージダウン……といった懸念は無用だという。アメリカの野球ファンにとって「選手の横に通訳が立つ光景」は珍しいものではないからだ。

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