違法スカウト集団「ナチュラル」壊滅を進める警察の内部文書入手 スカウト狩りで揉めたヤクザとの「その後」と“大人のおもちゃ”を使った「壮絶リンチ」

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 通称「トクリュウ」。警察が撲滅を目指す「匿名・流動型犯罪グループ」の中には、暴力団をケツ持ちにして、繁華街で活動を続ける風俗業者も含まれる。2022年12月、警視庁は違法スカウト集団「ナチュラル」壊滅を目的としたタスクフォースを結成した。警察を本気にさせたナチュラルとはいかなる組織なのか。独自入手した警察の内部資料をもとにその実態に迫る。(前後編の前編)

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新聞・テレビが報じなかった「壮絶すぎるリンチ」

 昨年11月1日、警視庁組織犯罪対策部暴力団対策課はメンバーの男性を監禁・暴行したとしてナチュラル幹部の沢田和哉(当時32)、兼子エディ(同29)両被告ら14人を監禁と強制わいせつ致傷の疑いで逮捕した。

 各社横並びに報じたこのニュースで明かされなかったのは、男性を被害者とする「強制わいせつ致傷」の詳細である。

「肛門に大人のおもちゃを無理やり入れる“恐怖の拷問”を加えたのです。沢田被告らは被害男性に対して組織の規約を破ったと因縁をつけ、歌舞伎町の雑居ビルで8日間にわたって監禁し、フライパンで殴るなどの暴行も加えた。男性は尻から出血するなどの怪我を負った」(捜査関係者)

 11月20日、暴対課は別の幹部ら2人を、監禁された男性に電話をかけ「事件化しませんという書面を用意すれば終わりにできる」と脅迫したとして、組織犯罪処罰法違反(強談威迫)の疑いで逮捕した。12月には、被害男性から金を脅し取ろうとしたとして沢田、兼子両被告を恐喝未遂で追送検。さらに年が明けて1月19日には、監禁事件に関与したとして新たに5人を逮捕した。

ナチュラルトップに君臨する「兄弟」の素顔

「ルフィグループが起こした広域強盗事件もそうですが、警察庁は”トクリュウを徹底摘発して壊滅せよ”との大号令をかけている。タスクフォースでは、現在もあらゆる側面から違法行為を立件できないか捜査を展開中です」(前出・捜査関係者)

 その土台となるのが、組対部が作成した15ページにわたる内部資料なのである。イントロダクションにはこうある。

〈ナチュラルは木山(稼業名)兄弟の長男であるN(実際は本名)が発起したスカウト組織である〉(以下、〈〉は資料の抜粋)

〈法人設立登記をせずにスカウト活動を行い、歌舞伎町地区のほか都内の大規模繁華街にて同所を縄張りとする暴力団に多額の現金を支払うなど共存共栄を謳いながら、巨額の資金獲得活動(通称スカウトバック)を行い、組織の拡大を図る一方、警察を「ウイルス」と称し、取締りを回避すべく、メンバー間でさえ本名を秘して源氏名を使わせ、かつ自身らで開発した秘匿性の高いアプリでメンバー間の通信・やりとりを厳命するなど、徹底した警察対策を講じる秘密結社的側面を持つ反社会的組織である〉

 トップとされる木山兄弟の写真も載っている。双子の兄弟とのことで、いかつい面構えから丸刈り頭までそっくりである。2人が組織を旗揚げした経緯については、

〈木山ことNがスカウトを始めたのは、平成18年頃であり、立川にある「ランコム」というグループでスカウトとしての経験を積んできた。Nはスカウトとして2、3年の経験と業界の知識を得る中、ランコム上層部との方針(報酬)、意見相違などから本来は御法度とされるグループからの独立を企て、これを実行し、立川エリアを外した歓楽街に活動区域を移し、次第に仲間を増やし、自身らを「ナチュラル」と名乗るようになった〉

〈その頃、双子の弟である木山(稼業名)ことKは、神奈川県川崎市の消防士として高津消防署で勤務していたが、Kは兄であるNのスカウトマンとして生き生きした姿に魅せられたことで、川崎消防局を退職してナチュラルに所属し、兄弟揃ってスカウトを始め、業界内で木山兄弟として頭角を現していった〉

次ページ:歌舞伎町で起きた「スカウト狩り」騒動の顛末

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