水原一平氏の違法賭博問題をテレビ局はどう報じたか フジ記者の強引な取材と解釈に疑問

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

 新婚の大谷翔平選手のお祝いムードは、水原一平通訳の“違法賭博”疑惑と突然の解雇で一変した。水原氏は開幕戦の後に姿を消し、本人を取材できないテレビ各社は、水原氏の周辺人物の取材に勤しんでいる。そうしたなかで“強引なドアホン越し”取材を行ったテレビ局も現れ、“マスゴミ”批判も強まっている。

 かつては、報道記者としての訓練を受けていないワイドショーのレポーターによる無神経な取材が問題になった。ところが現在では、その道のプロであるはずの記者が安直な取材を行っている。今回もそれが露見した格好だ。【水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授】

安易な取材が少なくない報道局の記者たち

 水原氏が最後に公の場に姿を現したのは3月20日。ドジャース対パドレスの試合後に行われた大谷選手インタビューの通訳の場面が最後だった。この日、球場からホテルに戻ってきた彼の様子を視聴者が撮影した動画が、われわれが確認できる直近の様子だ。

“違法賭博”の疑惑については、渦中の本人を取材するのがセオリーだ。もしも本人が姿を現さない場合には、次の選択肢として、水原氏がどんな人間なのか、賭博との関連について知っていそうな人物を探すことになる。

 3月24日の日本テレビ「真相報道バンキシャ!」では、水原一平氏をよく知る人物として、学生時代の2006~2009年の3年間バイトをしていたロサンゼルス郊外の「鮨処古都」の松木保雄店長にインタビューしていた。

(松木保雄店長)
「(水原一平氏が)ディーラーの学校があるらしい。『そんなの行ったけどダメだったよ』と言って『向いてなかったんだ』と。自分の向き不向き、向いた仕事を探す時期だったんでしょうかね」

 カジノのディーラーを目指して専門の学校に通っていたという証言である。さらに番組では、とあるカジノ・ディーラーの学校を取材していた。

 さらに“違法賭博”の元締めで、水原氏を誘って取引した相手だというマシュー・ボウヤー氏の自宅を記者が訪ね、庭先で本人に直接質問もしていた。

 返ってきたのは「ノーコメント」だったが、犬を連れて歩くボウヤー氏の表情などはよくわかった。表情が見える取材をしたというだけで映像メディアであるテレビ報道としては価値がある仕事といえた。

 ボウヤー氏の弁護士がその後に取材に応じ、「ボウヤー氏が『Otani』 という名前から電信送金があったと認識していた」「電信送金書類を見たわけではないし何があったか正確なことはわからない」「『Otaniから借入金』」と書かれた振り込みのメモがあった」「大谷選手についてボウヤー氏は会ったことも話したこともない」と回答した。

やや強引なTBS

 水原氏の解雇が明らかになった日本時間の3月21日と22日には、各社の夕方のニュース番組で、寿司店やボウヤー氏などを取材していた。なかにはドアホン越しの顔の見えない取材もあった。

 21日のTBS「Nスタ」では、学生時代に水原氏がバイトしていた寿司店を取材していた。「バンキシャ!」も取材した寿司店だ。

「2006年頃、頑張って野球の仕事したいと言って目指していましたけどね」

 と語る店長。

「(ギャンブルについて水原氏から話を聞いたことがあるか?という質問に)まあ…友だちとそういうようなことをやっていたかもしれませんが、それは趣味で自分の稼ぎの範囲でやっていれば問題はなかったんでしょうが…」

 水原氏が学生時代からギャンブル好きだったことを匂わせようとする、やや強引なインタビューだった。だが、店長は当時の水原氏とギャンブルとの関係については言葉を濁し、「バンキシャ!」のようにギャンブルに関連する言葉を引き出すことはできなかった。この番組では翌日、ボウヤー氏の自宅も直撃し、ドアホン越しに「ノーコメント」と断られている。

次ページ:波紋を呼んだFNNの「ドアホン」取材

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。