センバツ初戦突破!健大高崎が誇る“司令塔”箱山遥人の凄み “機動破壊”から方針を転換

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「組み立ても理詰めで話すようにしています」

 試合後、箱山に話を聞いて感じたのは、単純なプレー以外での視野の広さと意識の高さだ。投手への声掛けについても、相手の性格を考えてかける言葉を選んでいるという。

「佐藤はよく考えて投げるタイプで理解力も高いので、こちらもそれに合わせて組み立ても理詰めで話すようにしています。石垣に同じように話すと考えすぎて良さが出ないので、とにかく自分の良いボールを投げれば大丈夫ということを伝えています。9回のピンチでも、石垣にはそんな感じで思い切って投げてこいと言いました」

 9回の2死満塁ピンチでは、外野がかなり前進していた。これは、箱山の指示によるもの。石垣の球威であれば、内野と外野の間に落ちる打球しか飛ばないと判断していた。実際、最後の打者は、力のないショートライナーに倒れて、ゲームセットとなった。投手と相手打者の力を考えて、的確な指示を出せる点も大きな強みと言えるだろう。

守備だけでなく攻撃でも「司令塔」に

 また、捕手は守備面の司令塔という印象が強いかもしれないが、箱山は攻撃面でも司令塔の役割を果たしている。7回に集中打で3点を追加した場面についてもこう話してくれた。

「(部長の)生方(啓介)先生から相手投手が100球を超えたところが得点できる確率が一気に高くなると事前に言われていました。7回の先頭打者が四球で出塁した時がちょうど100球直前だったので、ベンチでそのことを全員に伝えて、上手くその後の攻撃に繋がったと思います」

 甲子園球場のバックスクリーンには、投手の球数が表示されているとはいえ、守備のことも考えながら、相手投手の動向にも気を配るというのは簡単にできるものではない。青柳監督もチームの歴代捕手の中で総合力では箱山がナンバーワンと話しており、こういうプレー以外の面での貢献度も大きいことは間違いないだろう。

 強力打線や力のある投手を複数揃えていることももちろんだが、頼れる司令塔がいるというのが、選抜優勝を狙う健大高崎にとって何よりも大きな強みなのかもしれない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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