苦し紛れの談話…金与正・朝鮮労働党副部長は人を馬鹿にしているのか

国際 韓国・北朝鮮

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 モンゴルのオフナー・フレルスフ大統領は、3月11日に北朝鮮の朴明浩外務次官と会談した。日朝首脳会談のための仲介が話し合われた。メディアは気が付かなかったが、北朝鮮はモンゴル大統領を日朝首脳会談の仲介役に選んだ。同大統領は、金正恩総書記に日朝首脳会談を提案していた。

日朝首脳会談、狂走曲

 北朝鮮首脳が「会えないことはない」と、岸田首相に呼びかけた。日本非難をやめた。国家目標の「吸収統一」の言葉が消えた。大韓民国を事実上国家承認し、南北平和共存に道を開いた。北は激変と危機に直面している。

 日朝首脳はいつ会うのか。日本外交は久しぶりの出番に走り回る。でも、北朝鮮外務省には交渉・決定権限がない。だから、日朝交渉は何度も失敗した。首脳会談の年内実現は可能だが、金与正(キム・ヨジョン)氏が「障害物」と称した拉致問題の“移動”が課題だ。日本のパイプは、まだ金正恩総書記に届いていない。

 北朝鮮は、どのルートや筋を使い日本に接近するのか。官邸と各省庁、外務省、韓国大使館、米国大使館関係者も懸命の情報収集に走る。小泉訪朝は、首相書簡が金正日氏に届き、返事が来た。届けたのは、外務省アジア局長ではなかった。飯島勲・元秘書官の証言だ。

 裏金問題に揺れる永田町・霞ヶ関の裏で、自民党政治家が朝鮮総連幹部に接触した。「北朝鮮利権ドリーム」に走り、総連の意を受けた声明文を準備した。総連が北朝鮮の工作機関であるとの認識がない。国民民主党の玉木雄一郎代表が、「日本から複数のメッセージを出してはいけない」と反対した。この対応は正しい。

 総連首脳は、北朝鮮の指導者から信用されていない。指導者は一度も面会しない。総連の会員は、40万人から今は1万人に激減。その衰退を平壌は怒っている。それを知らない政治家が総連に群がる。

「日朝改善の構想も関心もない」の苦し紛れ

 日朝関係は、昔も今も詐欺師と嘘つきに騙された。「外交敗北」の連続だ。民主党政権は、末期に「平壌に飛べる」の工作に引っかかり、在日の詐欺師・工作員に数億円の資金を手渡した。密かに全日空機までチャーターしたが、飛べなかった。

 日本人には、理解できない現実がある。北朝鮮では、「日朝首脳会談をして日本から資金を取りましょう」とは、誰も指導者に進言できない。もし言えば、「日本からいくら取れるのか」と聞かれる。

「1兆円か、2兆円」と言えばウソになる。更迭どころか、逮捕される。処刑かも。指導者に嘘をついたからだ。日朝関係改善の話は命懸けだ。「日朝首脳会談をする」と指導者が言わなければ、誰も発言できない。直言できるのは、実の妹の金与正氏だけだ。

 党副部長の金与正氏が先月、「北朝鮮指導部は日朝関係改善にいかなる構想も持っていない、接触に何の関心もないと認識している」と述べた上で、「岸田首相が平壌を訪問する日が来ることもありうる」と明言した。人を馬鹿にしているのか。

 この「談話」は、金正恩氏の指示で発表された。こんなことを、勝手に言える人物はいない。では、なぜ「日朝改善の構想もない。日朝接触に関心ない」と言うのか。軍部と長老たちの反発に配慮しているからだ。

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