「批判に晒されてもSNSはやめられない」…現役漫画家が明かす「セクシー田中さん」問題に通じる“切実な事情”とは

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SNSがやめられない理由

 近年、漫画家を悩ませるのはSNSである。SNSを通じて、作品への批判や苦情が、ダイレクトに漫画家に届くようになったのだ。Xなどのアカウント開設している漫画家C氏は、「ミュート機能などを駆使して、ネガティブなコメントを見ないように防衛している が、それでも批判は届いてしまう」と、苦悩を語る。

 SNSがなかった時代は、ファンレターの中身を編集者がチェックし、批判的なコメントを渡さないように配慮していた。ところが、「WEBTOONなどの縦読み漫画のサイトには読者のコメント欄が設けられ、賞賛も批判も自由に書き込めるようになっている。これが一部の漫画家を苦しめる要因で、私を含め、廃止を求める漫画家仲間はたくさんいます」とC氏は言う。

 こう悩みを打ち明ける漫画家がいる一方で、ある大手出版社の編集者は、「できることであれば漫画家はSNSをやらないほうがいい」「見なければいいのではないか」というのが持論である。しかし、これに対してC氏はこう反論する。

「ネットをやめろと言っても、そうはいきません。なぜならば、漫画家がネットをやめられない背景には単行本の売り上げが減少し、出版社が積極的に宣伝を行ってくれなくなったためです。1人でも多くのファンを獲得するために漫画家が“営業”しなければいけない、切実な事情もあるんですよ。出版社がもっと営業に回ってくれたら、僕はSNSなんてやりたくないんです」

印税が少なくなり、新人が生活できない

 C氏がこう打ち明けるように、紙の単行本の売り上げは減少の一途をたどる。かつて、「週刊少年ジャンプ」で連載をしていた漫画家D氏によれば、「1990年代であれば新人でも初版で3~5万部を印刷してくれることも珍しくなく、生活費に充てることができた」と言う。ところが、現在では単行本の初版は、新人であれば2000~3000部程度という極めて少ない部数に抑えられることも少なくないそうだ。

「漫画家は、特に週刊連載がそうですが、アシスタント代を支払うと原稿料がほとんど残らない。そのため、印税によって赤字分を補填する形をとっていたのです。ところが、印刷部数を抑えられると、それすら難しくなる。紙の本は印刷しただけ印税が入りますが、電子書籍は売れただけ入る仕組みなので、無名の新人にとっては圧倒的に不利なのです」

 D氏は、週刊連載の恩恵を大いに受けたと言いつつも、「原稿料の仕組みを見直す時期にきているのではないか」と語る。

「週刊連載のペースで原稿を仕上げるためには、アシスタントを最低でも3~4人は雇う必要があります。その代金は、出版社ではなく、漫画家が原稿料の中から捻出するのです。昭和や平成の時代ならそれで成り立ったのかもしれませんが、時代は変わりました。出版社がアシスタント代を別途補助する仕組みは、必要ではないでしょうか」

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