佐々木麟太郎 スタンフォード大監督は彼のどこに惚れ込んだのか 学費全額免除の真相

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背番号「3」を背負って

 アメリカの名門スタンフォード大学に進学する佐々木麟太郎(18)が3月5日、テレビ朝日系「モーニングショー」のインタビューを受け、ソフトバンクグループの孫正義会長が、日本の高校を中退し、単身渡米。カリフォルニア大学バークレー校に進んだ逸話に感銘したことが、自身の進路選択に影響したと明かした。米国の新入学は9月だが、4月から先行して単位を取得する授業を受けながら、野球部の練習にも参加する予定になっている。

「日本の大学野球、例えば六大学野球なら主将は10番(東都大学野球なら1番)、監督は30番(同50番)と、所属する連盟によって決まっている背番号があります。また、大学ごとに背番号とポジションが決まっていることもあり、伝統校の早稲田大学ではエースは11番、正捕手は6番、レギュラーサードは5番となっています。もっとも、米国の大学ではそうした縛りはないようです」(アマチュア担当記者)

 佐々木をはじめとする9月入部の学生たちに対し、スタンフォード大学は卒業予定の部員の持っている番号と、空き番号を知らせた。その表を佐々木が見たのは2月下旬。同大学野球部のデービッド・エスカー監督も、ドジャース・大谷翔平(29)と佐々木が、同じ高校であると知っており、大谷と同じ背番号「17」を勧めるメッセージカードも送ったという。

「空き番号表のなかには、元ジャイアンツのバリー・ボンズのつけていた25。大谷同様、花巻東の先輩に当たる菊池雄星(32=ブルージェイズ)の16も入っていました。ボンズはメジャー最多の762本塁打で、佐々木が子供の頃から憧れていたことを知っていて、提案したそうです。一桁の番号では、7も空いていたようでしたが……」(米国人ライター)

 だが、佐々木が選んだのは「3」だった。高校時代は主に一塁を守り、ポジションに合致するだけでなく、3年時の背番号も3。それゆえ、馴染み深い番号を選択したのだろうと関係者は予想していた。ところが、本人曰く、

「3番と言えば、長嶋茂雄さん。頭の奥底にイメージがあります。プロ野球で、記録だけでなく記憶にも残る選手。3番でプレーすることに喜びを感じています」

 さらに、長嶋氏が日本だけでなく、アメリカでも有名で、広くその名を知られていることも理由にあげていた。

大学でどこまで技術を伸ばせるか

 スタンフォード大学のユニフォームは白地、胸に赤字の筆記体で「Stanford」と記されている。帽子も赤で、正面に白地で「F」。一見すると、広島カープのユニフォームに似ている。部員数は4学年合わせて約60人で、全員、メジャーリーグのドラフト会議に指名されることを夢見ているという。

 佐々木はフルスカラシップ制度により4年間の学費と光熱費など、総額約5000万円を全額免除されたことは既報通りだが、こんな情報も聞かれた。

「高校通算140本塁打を放った打撃力は認めます。でも、パワーだったら中南米出身の選手には敵わないし、ホームランで対抗できるハイスクールの生徒は米国にもたくさんいます。全額免除の奨学生となれたのは、最終的にエスカー監督の推薦もあったから。監督は佐々木にぞっこんで、『飛距離だけではなく、打率も残せる珍しいタイプだ』と米国のメディアに話していました。打線の中軸を打ってくれることを期待しています」(前出・米国人ライター)

 エスカー監督はこれまで、SNSで佐々木のプレーをチェックしていたというが、「打率も残せる珍しいタイプだ」と評したところをみると、米国の大学生球児には一発を狙いに行く、荒削りなタイプが多いということだろうか。一般にバッティング技術やグローブのハンドリングなど、細かい技術指導では高校生までなら日本のほうが優れているという。世界大会も経験した中学硬式野球チームの指導者がこう話す。

「米国では、18歳までは選手の長所を伸ばす指導がメインになります。例えば肩の強い子がいて、強肩をアピールしようと思って、バックホーム送球が起こりうる場面でも外野の深めで守り、中継に入った内野手を無視して遠投をする。強打力をアピールしたい子が、高めのボール球を空振りしても、ベンチでは称賛の拍手をしていました。日本なら、『守備位置を考えろ』『ボール球には手を出すな』と注意されますよね。あとで聞いたら、『彼はチャレンジをした。立派だった』と褒めていました。そういう自己アピールをし、成功してきた球児がジュニアハイスクールからハイスクールへ、ユニバーシティへと進んでいくのです」

 米国の大学野球部では、マイナーやルーキーリーグのコーチが定期的に指導してくれる。「元マイナーの指導者」として、専属コーチを雇う大学もある。肩の強さ、打球の飛距離などの長所を伸ばす指導はもちろんだが、欠点克服のための細かなアドバイスがされるという。

「佐々木がエスカー監督の期待通り、打率が残せるタイプだと練習で証明できれば、即実戦デビューでしょう。ただし、MLBドラフトの指名を断って大学へ進学してくる投手も少なくありません。まずは、向こうの大学生投手のスピードに対応できるかどうかが第一関門となりそう」(前出・米国人ライター)

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