大股で歩く、アプリで聴力チェック… 認知症予防のためにすぐやるべきこと7選

ドクター新潮 ライフ

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食事と認知機能の関連

【食事の品数を増やし、食卓を彩りよく】

 認知症予防の食事としてエビデンスがあるのが、地中海沿岸の国々で伝統的に食べられている地中海食。

 では、日本食はどうなのか? 国立長寿医療研究センターが、日本人のエビデンスを得るために食事と認知機能の関連を横断的に検討し、結果を発表しています。それによると「DHAの血中濃度が高い=魚をよく食べている」「乳製品やココナツミルクに多い短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸の摂取が多い」「緑茶を日常的に飲んでいる」「アミノ酸摂取量が多い」人は認知機能が保持されている――。

 いずれも日々の食事に取り入れたいポイントですが、同センターの研究結果には、もっと簡単に、今すぐ取り入れられそうなものがありました。それは「さまざまな食品群をバランスよく食べている食の多様性が高い人ほど認知機能が低下しにくい」というもの。

「食の多様性」はつまり、さまざまな料理を食べているということ。「パンとコーヒー」ではなく、「ご飯、みそ汁、サラダ、煮物、納豆、緑茶」といった具合です。研究では「主食も、混ぜご飯やオムライスなど具材入りで、サラダや煮物、汁物は具だくさん」が良いと報告しています。

「食の多様性」を実現するには、献立を考える、食材を買いに行く、料理を作る、余った食材の使い道を考える……と脳を働かせなければなりません。自炊派でなくても、多種多様な料理を食べるために、どこで何を買うか/食べに出かけるか、考えなければならないでしょう。食が豊かになり、栄養面も良くなる。認知症予防にならないわけがありません。

脳に限ってはたばこよりアルコールがだめ

【お酒の量を減らす】

 脳に限っては、たばこよりアルコールの方が害が大きい。アルコールは神経毒であり、神経伝達物質アセチルコリンの働きを低下させます。アメリカで行われた大規模な研究では、60歳の脳の萎縮度合いは、大きい順に「大量に飲んでいる人」→「大量に飲んでいたがやめた人」→「少量だけ飲む人」→「酒を飲まない人」だったとの結果でした。

 アルコールは睡眠の質を低下させます。食事の摂取量が増え、肥満になりやすくなる。塩分や脂肪分の多いものをつまみとして取りがちになり、高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクを高めます。いずれも、認知症のリスクを高める要因です。

 理想は、休肝日を作る。適正飲酒量(1日平均純アルコールで20グラム程度。ビールならロング缶1本)にとどめる。しかしお酒を飲むのが習慣化している方には、いきなりは難しいかもしれません。とにかく、今飲んでいる量より1割でもいいので、減らすことから始めてみませんか?

 まずは上の7項目から。「暇ができたら」などと思わず、読んだらすぐ、行ってください。

新井平伊(あらいへいい)
順天堂大学医学部名誉教授。2019年よりアルツクリニック東京院長。 1999年、日本で初めての「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。 アルツクリニック東京では、世界に先駆けてアミロイドPET検査を取り入れ、また、認知症発症前の人を対象にした健脳カフェを開くなど、「認知症にならない・進行させない」に取り組む。

週刊新潮 2024年3月7日号掲載

特別読物「ドミノ倒しが始まるのは40~50代から! 『早期予見・早期予防』やるのは『今』 『聴力』『お酒』『スマホ』『大股歩き』… 『認知症』発症阻止に実行すべき『7項目』」より

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