8年長生きできる? 「タウリン」が持つ驚異の力とは…「投与したマウスの寿命が10%以上延びた」

ドクター新潮 ライフ

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肝機能改善や心不全治療に

 医薬品扱いと聞けば「合成タウリンにも副作用があるんじゃないか」と心配になるかもしれませんが、この点も天然タウリンと違いはありません。体質などでタウリンを多く摂取すると下痢をする方もおられますが、栄養ドリンクなどに入っている1~3グラム程度であれば、1日の摂取量として特に心配はないでしょう。

〈人類、とりわけ日本人とは戦前から密接な関係があったというタウリン。現状で認められている効能にはどのようなものがあるのだろうか。〉

 医療用医薬品として効能が認められているのは肝機能改善(高ビリルビン血症)、心不全治療(うっ血性心不全)およびミトコンドリア病(MELAS)症候群における脳卒中様発作の抑制です。これ以外に、ヒト試験において血圧低下作用などが論文で報告されています。

 例えば、心不全患者を対象にした試験で、タウリン1日3グラムを4週間投与したところ、心不全特有の息苦しさや動悸、疲労しやすさといった自覚症状、むくみや腹水などの症状が改善されました。これはタウリンが弱った心臓の収縮を助けることで心不全の諸症状が改善したものと考えられています。

 また、高血圧との関係でもさまざまな試験が行われています。例えば高血圧の患者に1日6グラムのタウリンを投与したところ血圧の低下が確認できたという研究や、尿中タウリン排泄量の調査から、高血圧患者の体内でタウリン量の低下が確認できたという研究が知られています。さらに、高血圧患者に1日60分の運動を週3回、10週間継続してもらった結果、血圧が低下するとともに血中のタウリン量が増加したという研究もありました。つまり、増加したタウリンが血圧の低下に寄与した可能性があるということです。

運動能力の向上

 もちろん、医学的に承認されるところまでいってはいないものの、有効性が期待されている効果もたくさんあります。

 その一つが、運動能力の向上です。

 体内のタウリンは6~7割が筋肉に存在し、そこでタウリンは筋肉の収縮を助ける役割を果たしているのです。筋肉の収縮にはカルシウムが必要なのですが、タウリンにはカルシウムを引っ張ってくる作用があります。実際、タウリンを何日間か投与したマウスは動きが俊敏になるようで、マウスが元気で手でつかみにくくなっているというような話を研究者の間でよく耳にします。

 また、タウリンが面白いのは作用する場所によって全然違う働きをするという点です。

 例えば、脳に存在するタウリンは、交感神経の働きを抑制して興奮を鎮める作用があるんです。戦前にタウリンを鎮痛剤として注射していた話をしましたが、これはまさにこの鎮静作用を利用したものといえます。脳では興奮を鎮め、筋肉では収縮を増強し運動能力を上げるわけですから、タウリンは脳と末梢で真逆の働き方をしているわけです。

 また、先ほどタウリンの浸透圧調節機能について述べましたが、表皮に存在するタウリンは、われわれの皮膚の浸透圧の調節にも一役買っていることが分かっています。つまりタウリンは皮膚の表皮細胞が水分を保持するうえで重要な役割を担っており、保湿効果を発揮してくれるのです。

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