8年長生きできる? 「タウリン」が持つ驚異の力とは…「投与したマウスの寿命が10%以上延びた」

ドクター新潮 ライフ

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タウリンの役割とは?

 タウリンの役割は、一言で言えば「生体恒常性維持機能」。つまり、細胞や臓器が正常に働けるように細胞内の環境を整えたり、外部環境の変化から細胞を保護したりする役割を担っています。タウリンはほぼ全身の組織に存在し、日々、細胞や臓器が正常に機能するよう、機械の潤滑油のような働きをしているのです。

 例えば、この生体恒常性維持機能の一つに「浸透圧の調節」が挙げられます。地球上の生命体は約38億年前に海の中で誕生したのですが、体内の塩分濃度は海水よりも低いため、浸透圧を調節しなければ細胞内の水分が体外に排出され命を落とすことになってしまいます。そこで、海水と体内の浸透圧差を調節するために用いられたのがタウリンなのです。

 このような機能から、タウリンは陸で暮らす動物よりも魚や貝類に多く含まれることが分かっています。また、野菜にタウリンが全く含まれていないのに対し一部の海藻類にタウリンが含まれているのも、この浸透圧調節の機能が関係していると考えられています。

 生命誕生の頃から生物の体内に存在しているタウリンですが、人類がタウリンを“薬”として利用してきた歴史も意外と古いんです。

日本海軍も乗組員に投与

 タウリンは今から200年ほど前の1827年にドイツの2人の科学者によって牛の胆汁から発見され、雄牛を表すラテン語の「タウルス」にちなんでタウリンと名付けられました。しかし中国では、それよりはるか昔からタウリンが漢方薬の一成分として用いられていました。中国には、紀元前から強心、鎮静、解毒、疲労回復、滋養強壮、不老長寿などに効くとされてきた「牛黄(ごおう)」という漢方があります。これは牛の胆汁中にできる胆石のことで、後の研究でタウリンがふんだんに含まれていることが分かったのです。

 日本でもタウリンは戦前・戦中から大いに利用されてきました。第2次世界大戦中には日本海軍がタウリンの効果に注目し、戦闘機のパイロットや潜水艦の乗組員に投与していました。急上昇と急降下を繰り返す戦闘機のパイロットは疲労が激しく、丸1日休みを取る必要があったのですが、タウリンを投与したところ短時間で体力が回復したそうです。

 また、タウリンによって結核やリウマチの痛み、じんましんの痒みが改善することが知られており、戦前にはそのような患者にタウリンを注射することも行われていたようです。いわば鎮痛剤や痒み止めとしてタウリンが用いられていたのです。

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