「カイロを便器に流され週に何度も修理」「注意すると逆ギレ」 中国人観光客に人気の白川郷の住民が嘆く「観光公害」

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キャラ弁体験は1万円

「後継者不足などでラーメン店の閉店が相次ぎ、ブランド力が少し落ちているということもあって、昨年10月から市と製麺業組合、それに市内のラーメン店らが共同して開発しました」

 そう説明するのは、「活力再生麺屋 あじ庵食堂」の店主だ。

「確かに日本人の感覚からすれば、私も高いとは思いますが、このラーメンに使う食材は全て地元産で価値あるものばかり。麺は県産小麦100%、チャーシューもふくしま会津牛を麹で熟成させ、喜多方産の漆塗りの器や箸で提供します。最初はウチを含め3店舗だけですが、今後は提供店も増えて製麺所や漆器店を巡るツアーなども行い、街全体でインバウンドを呼び込み盛り上げる予定です」

 グルメと体験を組み合わせたツアーとして、日本ならではの「キャラクター」と弁当作りを掛け合わせた「キャラ弁教室」が人気らしい。東京・赤坂で教室を運営する株式会社but art代表取締役の山口裕生氏(28)が言う。

「パンダなどの動物キャラクターをあしらった弁当を作る体験ができて、料金は2時間半で1万円。今は割引期間中で8000円です。日本人だと食材の原価を考えて高いと思われがちですが、日本文化を直接学ぶ講座は1万円超えが相場で、外国の方は玉子焼きを作るだけで新鮮な喜びがある。体験にお金を出すのを厭わないのです」

「ロシアの諜報員も」

 昔から訪日客に人気なのは「忍者体験」だが、浅草で90分1人2万5000円のサービスを提供するのが武蔵一族合同会社。その代表を務めるシバタ・バネッサ氏(71)に尋ねると、

「他社は忍者のコスプレをして手裏剣を投げて3000円で終わりだけど、ウチは山修行を10年以上こなして忍術のみならず忍者道の精神哲学を体得した講師もいるから、少し高いね。お客さんも真剣で、どうやって気配を消せるかとか知りたがる。欧米の富裕層やアラブの王族、ロシアの諜報員もいて本物を求める人ばかりです。リピーターも少なくないし、みんな満足して帰っていくよ」

 どれもが桁が幾つも飛び抜けた「コト消費」のオンパレードに見えるが、いったい日本の観光地はどこへ向かっていくのか。

 観光政策に詳しい戸崎肇・桜美林大学教授は、

「日本人が手を出せなくなり市場が二極化するという指摘はあるかもしれませんが、海外からの観光客が日本にお金を落すことで最終的に経済の好循環が起こることを考えれば、業界にとってもチャンスです。これまで日本は薄利多売で良い物を安く提供したいというサービス精神が旺盛な国だったわけですが、高い付加価値に見合った価格をつけることは悪いことではない。これを機に観光業界は価値のあるモノには適正な価格を払ってもらう方向へシフトすべきだと思います」

 海外では外国人観光客と現地人の価格を分けて販売する国もあるとはいえ、総じて日本人が旅を楽しむには財布に厳しい昨今、なんだかむしろ“貧しい国民”になったと感じられやしないか。

週刊新潮 2024年2月22日号掲載

特集「“春節到来” “1000万円豪華ツアー”も 『インバウンド』客がもたらす『日本列島』大異変」より

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