金与正が岸田首相に助けを求めた理由 最大の要因は「最後の同盟国」の裏切り

国際 韓国・北朝鮮

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国家崩壊に直面するとの危機感

 北朝鮮は、なぜ「大韓民国」と「尹錫悦大統領」との正式呼称を認めたのか。韓国や日本では、「韓国への軍事統一に戦略を変更した」との見方が広がったが、これは間違いだ。国際社会からの孤立を避けて国連制裁を解除させないと、国家崩壊に直面するとの危機感を、指導者兄妹は深めたのだ。

 北朝鮮は、極度の経済難と食糧難に直面している。さらに、若者の間に韓流文化への憧れが広がり、国家の正統性への疑問が生まれている。

 この危機を打開するためには、日朝首脳会談で日朝正常化による経済支援が必要だ。また、大韓民国を承認して南北首脳会談を実現し、南北融和を掲げ、国連制裁を解除させたい。そのためには、11月の米大統領選でのトランプ大統領の再選が不可欠だ。

 このため内政、外交戦略の転換を図ったのだ。だが、その実現は簡単ではない。昨日までは「大韓民国」と言ったら逮捕されたのだから、国内の混乱は避けられない。拉致問題の解決なしには、日本は支援できない。国連制裁も核開発を進める以上解除できない。

 岸田政権がいつまで持つのかわからないのに、岸田首相に「訪朝」への誘導談話を出さざるを得ない事態は、北朝鮮の危機を雄弁に物語っている。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、 論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、東京通信大学教授。早 稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。 著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和 システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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