「オヤジはハメられた」 “男・山根明”の息子が語ったボクシング業界の知られざる裏側

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「決して私腹を肥やしていたわけではない」

 日本ボクシング連盟前会長の山根明氏が1月31日、肺がんのため84歳で死去した。2018年、「男・山根」は、とにかく強烈なキャラクターで日本中の話題をかっさらったが、今にして思えばあの騒動とは何だったのか。唯一の実子、昌守氏(59)に“オヤジの真実”を聞いた。

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 2018年、日本ボクシング連盟における助成金の不正流用や身びいき審判などの疑惑が、明氏にかけられた。「日本ボクシングを再興する会」なる団体が同年7月、日本オリンピック委員会などに告発状を提出したからだ。突如としてバッシングの嵐が吹きつけた中、明氏は翌月に会長と理事を辞任した。

「たしかに、助成金の不正流用はやってはいけないことでした。とはいえ、オヤジが目をかけていた3番手の選手にもカネが分配されるように、親心でやったこと。決して私腹を肥やしていたわけではありませんでした」(昌守氏)

 明氏にとってのボクシング界の地盤、奈良県の選手を身びいき審判していると批判された“奈良判定”についても、

「例えば当時、疑惑の判定の象徴とされた中嶋一輝選手(30)の試合。彼は3ラウンド目でダウンしてしまいましたが、それまでは質のいいパンチを何発も入れていた。アマチュアの採点方法は、どれだけターゲットエリアに質のいいパンチを入れたかです。全体で見れば彼は順当に勝っていたのに、ダウンしたところだけを不当に切り取られ“奈良判定”だと揶揄されてしまったのです」(同)

「山根会長に不満を抱いていた人間は大勢おり……」

 昌守氏は「当時の“山根騒動”はクーデターで、オヤジを逆恨みしていた勢力にハメられた」と語るが、スポーツライターの小林信也氏もこう振り返る。

「6年前の騒動の渦中では私も、山根さんが一方的に悪くて、彼を追い出せばボクシング界が良くなると思い込んでいました。ところが、山根おろしの実態は一部の人間による権力闘争だったと、後から間違いに気が付いたのです。果たして今の連盟は正当なのか。功罪ともにあったでしょうが、少なくとも山根さんはボクシングへの本物の情熱をお持ちだったと思います」

 現在の連盟の内田貞信会長(51)に聞くと、

「あの頃、山根会長に不満を抱いていた人間は大勢おり、複数のグループに分かれていました。クーデターがあったという認識はございません。私自身は山根会長を追い出すつもりなどさらさらなく、連盟が正常な競技団体になってほしいと考えていただけで、会長職は推薦されて引き受けた結果にすぎません」

 昌守氏は、明氏について「滅茶苦茶でしたが、とんでもない大物だったと思います」と語る。

「男・山根」はいかなる人物だったのか。2月22日発売の「週刊新潮」では、昌守氏が父と交わした最期のやりとり、そしてボクシング業界の裏側などについても詳報する。

週刊新潮 2024年2月29日号掲載

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