【追悼】「現場にいたスタローンを主役と知らず…」 「ロッキー」アポロ役、カール・ウェザースさんの大胆さを物語るエピソード

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 映画「ロッキー」の第1作が日本で公開されたのは、1977年。ボクシング映画の金字塔で不朽の名作だ。

 シルベスター・スタローン演じる主人公、ロッキー・バルボアと激闘を交えたアポロ・クリード役を好演したのがカール・ウェザースさんだ。彼の名前は知らなくても、筋骨隆々の姿に見覚えがあることだろう。身長は188センチ、スタローンより10センチほど高い。

 世界ヘビー級チャンピオンのアポロは、全く無名のロッキーを対戦相手に選んだ。アメリカはどんな人間にも挑戦する機会が与えられる国であることを示そう、というアイデアだ。ロッキーは仲間に励まされ発奮。試合はアポロが優勢だったが、ロッキーは予想外の強さを見せ最終ラウンドまで戦い抜く。試合は判定にもつれこみロッキーは敗れた。だが、健闘は喝采を浴びた。

「目が優しく愛嬌もある悪役」

 映画評論家の垣井道弘さんは振り返る。

「『ロッキー』の脚本を書いたのもスタローンです。主役に有名俳優を起用することを断り、自ら主演するとの考えを曲げなかったため、資金が集まらず低予算だった。それでも成功したのは、アポロ役のウェザースさんが果たした役割が大きい。憎い敵役ではなく、だめでもともと、とチャンスに懸けるロッキーの心意気を真剣に闘うことで受け止めた。アポロはチャンピオンの貫禄とふてぶてしさがある一方、目が優しく愛嬌もありました」

スタローンを主役と知らず…

 ウェザースさんは、48年、ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ。プロのアメリカンフットボール選手として活躍。演劇に関心を持ち、74年、俳優に転じた。

「ロッキー」のオーディションでは現場にいたスタローンのことを主役と知らず、“本物の俳優と一緒だったら、もっとうまくやれたのに”と口走った。スタローンは怒るどころか、大胆でけろりとしている性格がアポロ役に合うと判断。そもそもウェザースさんはボクシングの経験がないのに、堂々と応募していた。

「ロッキー」はアカデミー賞の作品賞など3部門を受賞する栄誉に輝いた。

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