能登半島地震は人災だった? 27年間放置された県防災計画…「死者数は7名」という信じられない予測が

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人災の側面

 実際、防災計画の「津波災害対策編」を見ると、2011年度には、能登半島北方沖でマグニチュード8.1の地震、2016年度にも、マグニチュード7.57などの規模の地震が起こることを想定に入れ、新たな津波対策を講じている。

 が、なぜか地震についての想定は据え置かれたまま。こうした数字や姿勢が県民に“油断”を生じさせたことは否定できまい。

 例えば、震災で甚大な被害を受けた輪島市と珠洲市において、住宅の耐震化率はそれぞれ46%、51%。全国平均の87%と比べると低い。

 また、両市は県防災計画の被害想定に基づき、食料や水などを備蓄していた。

 輪島市の災害対策本部に聞くと、

「県の想定では発生する避難者数は1000人超でした。市ではそれを上回る1800人の避難を想定し、3食分の5400食分の食料と、5400リットルの水を備蓄していました」

 しかし、

「最も多い時で避難者は1万3000人近く出た。食料も水もまったく足りず、発災直後は1食も食べられない方もいました」

 珠洲市の場合、県の想定避難者数は800人弱。

「それに基づき、1000人×3食×3日分の計9000食を5年計画で用意していた最中でした。が、避難者は最多で7000人を超え、到底足りませんでした」(珠洲市危機管理室)

 やはり人災の側面は否めないのである。

「国に見直しを要請したのですが…」

 なぜかたくなに地震の想定を変えなかったのか。

 県の危機管理監室危機対策課に尋ねると、

「こちらでも見直しを検討していたんです」

 と返ってきた。いわく、

「そのために国に能登半島沖の海域活断層についての長期評価を出してほしいとお願いしてきました。しかし、応じてもらえなかった」

 説明が必要だろう。日本の地震の調査研究の中心は文科省の地震調査研究推進本部。そこでは全国の114の主要活断層や6地域の海溝型地震について、地震の規模と「〇年以内に〇%」などの発生確率を予測し、公表している。これが「長期評価」と呼ばれるものだ。

 が、能登半島沖の海域活断層についてはこの長期評価がまだなされていなかった。そのため、調査を要請し、それを基に想定を見直そうとしていたというのだ。

「2007年以来、年2回行われる全国知事会の場で知事が、また、県からも要望を年に数回は出していた。しかし国からは“優先順位がある”と言われ、17年間実現しないままでした。そこで一昨年、県は独自に調査を行い、見直しを図ることを決め、早ければ2025年度に改訂する予定でした」

 すると、“戦犯”は国なのか。

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