「マグロ人気」復活のカギを握る、トロでも赤身でもない「意外な部位」…“厄介者”に秘められた「最強物質」が万病の元を撃退

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 刺し身なら、ワサビ醤油よりも塩入りのゴマ油。エスカルゴソースのステーキや串カツ、シチュー、シューマイなんかもおいしいんです――。最近、全国でも有数のマグロ産地、神奈川県「三崎港」(三浦市)周辺で、少し意外なマグロ料理の開発が進んでいる。マグロとはいっても、トロや赤身、カマ肉でもなく、これまでは捨てられることさえあったマグロの「血合い」を使った料理である。【川本大吾/時事通信社水産部長】

「自然界最強の抗酸化物質」

 血合いと言えば、中には好きな人もいるだろうが、赤黒くて少々グロテスク。刺し身で食べようとすると、血が滴ってしまうこともあり、「ちょっと苦手」という人も多いのではないか。

 トロや赤身に比べて腐敗が早いこともあり、血合いは店頭で見かけることも、店の料理メニューとして提供されることも少ない。きれいなマグロの「サク」(板状の身)ではなく、大きめのブロックで買うときに、少し混じっているくらいであろう。

 そんなマグロの血合いに秘められた、「自然界最強の抗酸化物質」と呼ばれる成分が発見されたのは2010年のこと。マグロにはEPAやDHAが含まれ、さらに血合いには鉄分が豊富なのは知られていたが、この年に水産総合研究センター(横浜市、現・国立研究法人水産研究・教育機構)の山下由美子博士が、「セレノネイン」という化学物質が含まれていたことを突き止めた。山下博士らによると、魚の中でもマグロの身に特に多く含まれているのだという。

 マウスでの研究が進むなか、神奈川県水産技術センター(三浦市)と国立研究法人水産研究・教育機構、聖マリアンナ医科大学(川崎市)は2021年から22年まで、初の臨床試験よる共同研究を実施した。

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