漫画原作ドラマは誰のためのもの? 「セクシー田中さん」“原作改変”騒動で表面化した実写化作品の難しさ

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 昨年放送されたテレビドラマ「セクシー田中さん」(日本テレビ)の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった(享年50)。芦原さんは1月26日、自身のXで第9話と第10話(最終回)の脚本を自ら担当した経緯を説明したばかりだった。今回の原作改変騒動で表面化した実写化作品の難しさとは――。【冨士海ネコ/ライター】

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 漫画原作ドラマは一体誰のものなのだろうか。演出家か、原作者か、視聴者か。それともスポンサーやタレント事務所か。ドラマ制作者は日夜、頭を悩ませていることだろう。

「セクシー田中さん」ドラマ化における脚本騒動は、改めてその問いをつきつけた。原作者である芦原妃名子先生が、ラスト2話分の脚本を手掛けた経緯を発信したのは先月26日。ドラマ化するなら「必ず漫画に忠実に」という前提のもと、漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正を行うことや、ドラマオリジナル部分については「あらすじからセリフまで」用意するので、原則変更しないでほしいなどの条件を出した上で実写化を許可したという。しかし「毎回、漫画を大きく改編したプロットや脚本が提出され」たため、苦渋の決断の上、自ら脚本を執筆することになったとつづられていた。

 今は削除されてしまったが、芦原先生の投稿に非難めいたニュアンスはなかった。ただ自分の作品を大事にしたい思いと、それがうまく結実できなかったことへの反省と苦労が読み取れた。一方、最後の2話をめぐって不本意なやり取りがあったとSNSに投稿した脚本家には、批判が殺到。間に立っているはずのプロデューサーは何をしていたのかと矛先は日本テレビにも向いたが、悪者探しでネットがヒートアップする中、芦原先生の訃報が報じられるという最悪の事態が起きてしまった。

 日テレからは「原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」との発表があったが、あれだけ評判の良かったドラマだけに、なぜここまでこじれてしまったのか、なんとも後味の悪さが残る。

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