センバツでまた「不可解選考」 東海地区の“逆転現象”に「理解できない」との声も…なぜ、選考過程を透明化しないのか?

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過去には「国会」で取り上げられたことも

 1月26日、第96回選抜高校野球大会の選考委員会が大阪市内で行われ、出場する32校が発表された。今大会から“選出枠”に変更点があった。「21世紀枠」は3校から2校に減り、「一般選考枠」は、東北地区と東海地区が2校から3校に増えた。さらに、中国地区と四国地区は、「両地区で計5校」から「各地区から2校ずつ」に変わった。選考委員会の結果は「21世紀枠」から発表され、別海(北海道)と田辺(和歌山)が選出。続いて、「一般選考枠」は北海道地区から順に発表されたが、高校野球関係者から驚きの声があがったのが“東海地区”だった。【西尾典文/野球ライター】

 まず、昨年の東海大会で優勝した豊川(愛知)が読み上げられた。続く「二枠目」は同大会の準決勝で敗れた宇治山田商(三重)。そして「三枠目」は、準優勝の愛工大名電(愛知)だった。愛工大名電より、東海大会の成績がよくなかった宇治山田商が「二枠目」で選出される“逆転現象”が起こったのだ。

 筆者をはじめ、多くの高校野球関係者は、東海大会の優勝校・豊川と準優勝校・愛工大名電が当確で、残る1枠を準決勝で敗退した宇治山田商と藤枝明誠(静岡)が争うと考えていた。

 しかし、蓋を開けてみると、選抜の“不可解な選考”がまたも浮き彫りとなった。前述したように、今大会は東海地区の選考枠が増えたため、愛工大名電が落選するという事態は避けられ、大きな騒ぎにならなかったが、高校野球関係者にとって腑に落ちない結果だったといえるだろう。

 東海地区の選考を巡っては、一昨年の第94回大会において、前年秋の東海大会で準優勝した聖隷クリストファー(静岡)が落選し、準決勝敗退の大垣日大(岐阜)が選出される“逆転現象”が起こっている。これに納得できない聖隷クリストファーのOB会が33校目として出場を求める1万人以上の署名を集めたほか、国会でも、この問題が取り上げられるなど社会問題に発展している。

「これ以上の説明を差し控えたい」

 結局、聖隷クリストファーの出場は認められることはなく、大会を主催する日本高等学校野球連盟(高野連)と毎日新聞社は「(選考についての)詳細な内容は公開になじまない」、「当該校にもこれ以上の説明を差し控えたい」との方針を発表しただけで、この件は“幕引き”となった。

 改めて、宇治山田商と愛工大名電の東海大会での結果を見てみると、宇治山田商は準決勝で5対6、愛工大名電は決勝で7対8といずれも1点差で、優勝した豊川に敗れている。

 亀井正明選考副委員長は、それでも宇治山田商を上と評価したことについて、以下のように説明した。

「宇治山田商、愛工大名電は優勝した豊川に対してともに1点差の惜敗でありましたが、宇治山田商は9回まで2点をリードし、終始互角の戦いを繰り広げました。その戦いぶりから宇治山田商の投手力、守備力を評価して2校目として選出することとしました」

 この説明の通り、確かに宇治山田商は9回表まで2点をリードしており、一方の愛工大名電は初回に一挙6点を奪われるなど、5回までに8点をリードされる展開だった。

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