「吐いた物が肺に…」能登半島地震 日本の避難所の劣悪な環境を専門家が「国際基準以下」と指摘

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トイレの便器に袋を取り付けて…

 能登半島地震の被災者の中で、ついに新型コロナ感染による死亡者が出た。16日に亡くなっていたことが分かったのは、珠洲市の87歳の女性で、陽性と診断されるまでは避難所となった小学校で100人余りと生活を共にしていたという。敵は新型コロナウイルスだけではない。断水が続くなどして衛生状態が悪化する避難所では、さまざまなウイルスが人々を悩ませているのだ。

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 石川県内で開設されている避難所は現在、約450カ所。珠洲市と並び最も被害が甚大な輪島市には94カ所が残るが、24時間断水状態が今も続く。

「ふれあい健康センター」で暮らす明田元文さん(73)は、「うちの嫁はんも加賀の病院に入院しとんねん。コロナにかかったみたい。それにノロウイルスかわからへんけど、下痢とか吐いた物が肺に入ってしまったりとか。あと、腸が詰まって腸閉塞みたいになってしまってね」と話す。

避難所は極めて劣悪

 残念ながら、いまだに衛生環境は決して良くない。それもあって、県の発表によれば、避難所で多い時にはインフルエンザなど急性呼吸器感染症で1日160名超、消化器系感染症でも40名以上が、医療支援チームの診察を受けているというのだ。

「災害時の日本の避難所は、極めて劣悪と世界から指摘され続けているのです」と述べるのは、拓殖大学特任教授で防災教育研究センター長の濱口和久氏だ。

「紛争や災害時の避難所に関し、国際赤十字が最低限の水準を定めた『スフィア基準』がありますが、日本の避難所はこれにほど遠く“ソマリアの難民キャンプよりひどい”と言う人もいるほど。プライバシーや衛生環境が保たれていない」(同)

日当や交通費を支給

 日本の避難所の整備が遅れているのはなぜか。

「例えば火山大国のイタリアでは、政府が緊急事態宣言を出すと、その日のうちに自治体に備蓄してあるテントや簡易ベッド、トイレのユニットなどを運ぶ体制が整えられている。また、訓練を受けたボランティアが120万人以上いて、彼らが支援に入る。その際には日当や交通費が出ますし、公休も取れます。災害大国にもかかわらず、日本はいまだ、物的、人的な支援システムが整備不十分と言わざるをえません」(同)

 輪島市の断水は少なくとも2カ月以上続くという。

 1月25日発売の「週刊新潮」では、「72時間生き埋め」から生還した女性が遺した“最期の言葉”や、政府の地震調査で指摘された巨大地震の可能性が無視されてきた原因など、能登半島地震について詳報している。

週刊新潮 2024年2月1日号掲載

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