「トイレ問題は災害関連死に直結する」被災地支援のプロが「食料よりもトイレの支援と備えを」と訴える理由

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 避難所のトイレが即座に排泄物で溢れるなど、被災地における“トイレ問題”を露呈させた能登半島地震。断水によって今なお水が流せない状態が続くが、実は命を守る上では、食料以上に、トイレの支援と備えこそが重要なのだという。

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災害関連死の要因にも

 震災直後、能登の被災地からは、排泄に関する深刻な声も聞こえてきていた。

「水が止まってしまったせいで、そこらじゅうのトイレですぐに便が山盛りになってしまっていました。便を入れたビニール袋まで散乱していたくらいです。ここまでトイレに苦しめられるとは、正直予想していませんでした」(避難所に身を寄せた50代男性)

 断水の影響は大きく、今なお多くの避難所や自宅などでは、トイレが機能していない状態が続いているという。

「食料の支援がよく話題になりますが、実は被災地では、それ以上にトイレの重要度が大きいんです」

 そう話すのは、長年にわたって被災地支援や防災活動に取り組んできた、一般社団法人「助けあいジャパン」共同代表理事の石川淳哉氏だ。

「以前、避難所生活の経験者500人にアンケート調査を行ったところ、『困ったこと』として挙げられた第1位がトイレでした。食事は多少我慢できても、トイレだけは我慢できるものではありません。いくら食料が届けられたとしても、“出さないと入らない”わけですから、実はトイレこそいち早く整備しなければならない切実な課題なんです」

 トイレが不都合になると、命にも関わるのだという。

「震災時は、地震の揺れや津波などの被害で亡くなる『直接死』だけでなく、避難生活中に命を落としてしまう『災害関連死』にも目を向ける必要があります。その大きな要因の一つがトイレです。トイレが使えなかったり、尿や便であふれていたりしたら、できるだけ飲食を我慢しようとしますよね。それ自体が体調不良や持病の悪化につながりますし、脱水状態に陥ることで血栓ができやすくなり、いわゆる『エコノミー症候群』で命を落とすリスクも高まるのです」

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