ノルウェー大使館が大プッシュする「サモ肉」は“第4の肉”になるか? 人気ナンバー1「寿司ネタ」に“加熱調理”という新たな選択肢

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生でデビュー、人気はマグロ超え

 ステーキやカツ、生姜焼き、あるいは“すき焼き”なんかはいかが――。決してレストランのお薦めメニューではない。北欧の国・ノルウェーが、牛肉や豚肉、鶏肉に次ぐ「第4のお肉」と称し、国を挙げて売り込みを始めた食材がある。本当は肉ではないため、すぐに分かってしまうかもしれない。正解は「魚」。ノルウェー産のアトランティック・サーモンだ。【川本大吾/時事通信社水産部長】

 若者を中心に「魚離れ」が指摘される日本で、今や大人気となったサーモン。大手水産会社が行う寿司の「よく食べるネタ」ランキングでも、12年連続でマグロを押し退け第一位に輝いている。魚のまち、築地場外市場や豊洲市場の寿司店などでも、インバウンドだけでなく日本人からの注文も多く、もはや寿司ネタには欠かせない魚種となっている

 日本で不動の地位を築き上げてきたサーモン。振り返ると今から30年以上前、ノルウェーは国家戦略として寿司ネタ、つまり刺し身用として日本でのサーモン普及策に乗り出した。当時は「加熱は御法度」と頑なに“生”に拘った売り込みを進め、日本でサケの生食が敬遠されていることを物ともせずに、見事に「焼きジャケ」とは別の商品価値を生み出した。

 ピンク色が鮮やかな定番の握りや、軍艦巻きなど、回転寿司には多種類の関連メニューが並び、中には「炙りサーモン」といった少々火を入れた皿も回っているが、今度はステーキやカツなどと同じく「肉料理のように調理して食べて!」という。いったいどういう風の吹き回しなのか――。

火を入れたらもっと売れる!

 サーモンを「第4のお肉」としてPRしているのは、在日ノルウェー大使館水産部だ。日本には毎年、原魚に換算して計4~5万トンのサーモンを輸出(輸出時に頭や内臓を除去するため)しており、ここ20年ほどおおむね安定した供給実績を示す。

 寿司文化発祥の国・日本で、寿司ネタとしての人気はしっかり定着したのだから「願ったり叶ったり」としか言いようがないはずだが、ノルウェーでは「日本にはさらに伸びシロがある」と踏んでいるようだ。

 ノルウェーでは、サーモンを年間150万トン以上養殖生産しており、主な輸出先としてはポーランドやフランス、アメリカ、デンマーク、オランダなどが挙げられ、欧米諸国の消費量は日本の数倍に及んでいる。各国とも寿司ネタのような生食は珍しく、ほとんどはソテーなど加熱して食べているのだという。さらに近年は、韓国でも厚切りのサーモンを加熱調理して食べる量が増え、消費量は日本を上回っている。

 そこで同大使館水産部は、今以上に日本での消費を伸ばそうと、2023年の秋、大きなイベントを仕掛けた。サーモンを「サモ肉」とネーミングし、肉料理のように味わってもらうプロジェクトを昨年10月中旬から本格的に始めたのだ。 

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