詐欺師に狙われる駐日大使館のホームページ…「外交官の知らぬ間に悪用されていることがある」【元公安警察官の証言】

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しく映画に出演することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩み、数年前に退職。今年11月に『諜無法地帯 暗躍するスパイたち』(実業之日本社)を出版した勝丸円覚氏に、ある駐日大使館のホームページが改竄された一件について聞いた。

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 勝丸氏は公安部外事課で各国の駐日大使館との調整・連絡係を担当していた頃、詐欺事件の捜査で警視庁捜査2課に協力したことがあるという。

「都内にあるアフリカの某大使館のホームページが改竄された。その件で私に2課から協力要請がありました」

 と語るのは、勝丸氏。

「ホームページには、実在する日本企業がその国に進出、現地企業に投資しているという内容の記述がありました。しかしそんな事実はありません。その国は鉱物資源が豊富で、日本の詐欺グループが鉱山開発を名目に投資家から金を集めていた。彼らは大使館のサーバーに侵入して、ホームページを書き換えたという話でした。日本企業がその国からお墨付きをもらっていると言いたかったのでしょう」

捜査2課と連携

 改竄されたホームページに影響力はあったのだろうか。

「ホームページを改竄した効果があったようで、詐欺グループが指定した口座に現金を振り込んだ投資家が何人かいました。被害額は億単位に上ったといいます」

 その後、被害届が出され、警視庁捜査2課が捜査に着手した。

「2課では、外交特権という壁が立ちはだかり、大使や外交官を取り調べることができません。それで担当刑事から私のもとへ連絡が来ました。大使館に取り継いで欲しいというのです。外交官でも幹部クラスで、かつホームページに詳しい人と面談したいと依頼されました。私は大使とは食事に行く仲だったので、大使館に連絡すると大使が応じてくれることになりました」

 勝丸氏は、担当刑事と大使館へ出向いた。

「普通に考えれば、大使館の関係者が詐欺グループとグルになっている可能性もあります。ですが、担当刑事には事前に相手は全権大使なので、犯人を取り調べるようなきつい口調や態度は絶対やめて欲しいと伝えました」

 大使の部屋に入ると、日本人の女性秘書がいたという。

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