「吉田輝星」の育成を“放棄”した日本ハム “スカウティングと育成”が機能していないという大問題

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栗山氏「フロント入り」は吉か凶か

 そして、もうひとつ気になる点が、わずかな在籍期間で球団を去る選手が多いところだ。これまでも結果を残した選手は、積極的にポスティングでのメジャー挑戦やFA移籍を促してきたという部分はあったが、近年は結果を残せずに退団となる選手が目立っている。

 2016年に指名した選手では、3位の高良一輝と4位の森山恵佑がともに、3年でユニフォームを脱いだ(※高良は一軍登板なし、森山は一軍で通算5試合出場)。2019年には支配下で7人、育成で3人を指名したが、既に8人が自由契約、もしくは引退となっている(6位の梅林優貴は今オフに自由契約となり育成再契約)。

 また、岡大海(13年3位)と西村天裕(17年2位)は、トレード先のロッテで重要な戦力となっており、逆に獲得した選手は日本ハムで目立った活躍を見せていない。このあたりも、スカウティングと戦力の見極めが上手く機能していないと言えそうだ。

 昨年のドラフトでは、新庄監督から「わがままを言って即戦力の選手を獲得してもらった」という発言の通り、3位という高い順位で、メジャーでのプレー経験がある加藤豪将を指名したが、怪我の影響で期待通りの活躍を見せることはできなかった。また、6位で入団した社会人4年目の宮内春輝は、即戦力として大きな期待を寄せられたものの、15試合に登板して防御率6.48と低迷してしまった。さらに、秋季キャンプでは、左膝の怪我を負ってしまい、11月19日に育成契約へ切り替わっている。

 日本ハムは、低迷から脱出するために、稲葉篤紀ゼネラルマネージャー(GM)が二軍監督に配置転換となったほか、一昨年まで監督を務めた栗山英樹氏が編成トップの役職に就くことが発表されている。これらの発表後、最初の大きなニュースが、吉田と黒木のトレードであるところに、日本ハムの先行きに大きな不安が感じられる。

 栗山氏は、監督として日本ハムと侍ジャパンで結果を残したが、中日で監督とGMを務めた落合博満氏の例を見てもわかるように、優秀な監督が編成トップとしても結果を残せるとは限らない。華々しく開場した新球場「エスコンフィールド北海道」に歓喜の瞬間が訪れる日は、果たしていつのことになるのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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