キシダ退陣説に焦る韓国 「日本の食い逃げを許すな…」呼び捨てにされる最悪の後継候補は

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ドゴールの亡命政府と同じ?

 ミソが「仏独間の条約に準ずる」です。両国は戦争を繰り返してきましたが、どちらかがもう片方の植民地になったことはありません。だからエリゼ条約は対等な国同士が不戦を求めて協力体制を作る誓いなのです。

 韓日も仏独に倣って共同宣言を作るとなれば、当然「不戦の誓い」――過去のような戦争はもう繰り返さない、を前提にすることになります。ここまでくればしめたものです。

 1919年に設立された大韓民国臨時政府、いわゆる上海臨時政府が日本と戦っていた、という韓国の主張を日本が暗黙裡に了解したことになります。すると自動的に、韓国は法的には植民地ではなかったと日本が認定したことになります。日韓は対等な交戦国同士だった、ということになるのですから。

 ちなみに、上海臨時政府は1987年の憲法改正で初めて現在の大韓民国の源流と位置付けられました。しかし、依然として国際社会では正統性ある政府とは認められていません。中国国民党の下部組織に過ぎなかったからです。第二次大戦中にドゴールがロンドンに置いた自由フランス政府とはここが根本的に異なります。

 新たな共同宣言を実現すれば「徴用工問題」も韓国側の主張通りに解決します。日本が植民地支配は不法と認めた以上、日本企業は賠償金を支払う義務が生じるからです。韓日版「エリゼ条約」は相当な無理をしても実現する価値があります。韓国にとっては、ですが。

韓国に呼応するコリアスクール

――韓国政府も知恵を巡らしましたね。でも、日本人だって、こんな罠には気付くでしょう……。

鈴置:外務省や学会、メディアのコリアスクールは韓国に呼応する可能性が大です。すでに、いくつかの新聞が社説で「新たな日韓共同宣言」あるいは「エリゼ条約」に賛同しています。

★日本経済新聞(10月10日)「日韓安定へ新たなビジョンを共同で創れ

・日韓、日米韓協力の枠組みを制度化するのは適切だ。その精神となる理念と協力すべき分野を明示した共通ビジョンが必要になる。有識者でつくる日韓フォーラムが国際秩序の変化を踏まえ、バージョンアップした共同宣言の発表を提言したのは一考に値する。

★毎日新聞(10月12日)「日韓共同宣言から25年 『未来志向2.0』を目指す時

・考えなければならないのは、日韓関係を「国交正常化以降で最悪」と評された状況に逆戻りさせない仕組み作りだ。韓国の尹徳敏(ユンドクミン)駐日大使は、時代に合わせてバージョンアップした「共同宣言2・0」の必要性を説いている。
・第二次世界大戦で戦火を交えたフランスとドイツは60年代に、首脳・閣僚会談の定例化を定めたエリゼ条約を結んだ。日韓も、定期協議の枠組みを構築すべきだ。

★東京新聞(10月27日)「日韓宣言25年 関係をさらなる高みへ

・韓国の尹徳敏(ユンドクミン)駐日大使は最近の講演で、日韓関係が急速に改善している機会を捉え「両国の未来に向けた新たな宣言が必要ではないか」との考えを示した。
・日本の敗戦で朝鮮半島が植民地支配から解放されて80年の節目を2025年に迎えることを指摘した上での発言だ。「新宣言」のアイデアはフランスとドイツの和解・友好の基礎となった1963年のエリゼ条約(仏独協力条約)を念頭に置いたものでもある。
・隣国関係の新たな扉を開く取り組みには賛同する。ただ、掛け声倒れに終わらせてはならない。

ホイホイ乗るのはキシダだけ

――毒が回っていますね。

鈴置:外堀が半分ほど埋まった感じです。ここまで世論工作に成功したのですから、韓国は岸田政権が倒れる前に日本政府に「エリゼ条約」を呑ませることに注力するでしょう。岸田首相以外にホイホイと乗ってくれる政治家は少ない。韓国とすれば今がラスト・チャンスかもしれません。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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