キシダ退陣説に焦る韓国 「日本の食い逃げを許すな…」呼び捨てにされる最悪の後継候補は

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日本の食い逃げは許さない

 朝鮮日報の李河遠(イ・ハウォン)論説委員も「[論説室のニュース読解]賠償判決15人中11人が弁済案受け入れ…供託拒否4人が現金化すればまた破局に」(11月24日、韓国語版)で同様の主張をしました。

 李河遠氏は「徴用工問題」が尹錫悦政権の思惑とは異なり、解決の目途が立たなくなっていることから書き起こしました。そして、韓日関係は再び悪化の瀬戸際にある。これを避けるために日本は「さらなる謝罪と賠償」をすべきだ――と要求したのです。朴振長官の「コップの水」発言も引用しています。

「外勢依存」に関連しては「尹錫悦政権への支援という疑いを避けるために、日本企業の呼応はあるとしても2024年4月の総選挙の後になる」との見方を紹介しています。

 さらなる謝罪と賠償を要求する記事が再び目立つようになったのは、尹錫悦政権の弱体化による約束違反、つまりは「食い逃げ」が現実のものになったからです。「徴用工問題は解決した」と思い込んでいた日本でも、「日韓関係の逆戻り」が報じられ始めました。

 やや遅れて岸田政権も弱体化しました。今度は韓国側が日本の「食い逃げ」に目を光らせることになります。先ほど申し上げたように、韓国では「日本は約束を守っていない」ことになっている。岸田政権が倒れれば、その約束は不渡りになると心配するのが普通です。

 韓国の記者としても「さらなる謝罪と賠償」を求める際に「保守政権を支えるためだから頼む」と卑屈なロジックを使うよりも、上から目線で「食い逃げするんじゃないぞ。とっとと約束を守れ」と書く方が、はるかに気分がいいわけです。

韓日も「エリゼ条約」を

――キシダが倒れるまでに取れるものは取っておく……ですね。

鈴置:誰が次の首相になろうと、岸田政権ほど気前のいい政権は想像しにくい。私は「日韓版エリゼ条約」の要求も声高になると見ています。

 9月27日、韓国の尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使が東京都内で講演し「来年か再来年に新たな韓日共同宣言の発表を目指す」と述べました。

 講演会の主催者である時事通信が「駐日韓国大使、来年にも新たな共同宣言 『国境ない日韓関係を』― 頭越しの『米朝取引』警戒」(9月27日)で報じました。

――新たな日韓共同宣言に何の意味があるのでしょうか。

鈴置:誰もがそう思います。韓国は1965年の日韓国交正常化の際に結んだ請求権協定でさえ平気で破った国です。1998年の日韓共同宣言だって反古になった。新たな宣言をしてもまた破られるだけ、と日本人なら考えます。

 尹徳敏大使だけではありません。同じ時期に同様のアイデアを日本人に持ちかける韓国人が登場しました。これから見て、韓国政府が「新共同宣言」攻勢を本格化したのは間違いありません。

 普通の日本人からは冷笑されるような提案をなぜ打ち出したのだろうかと首を傾げたのですが、時事通信の先ほどの記事の次の部分で謎が解けました。

・尹大使は新たな宣言について、フランスとドイツの和解・友好の礎となった63年のエリゼ条約(仏独協力条約)に触れ、「それに準ずるような、未来志向で互いの国民に恵みが与えられるようなことを盛り込む必要がある」と語った。

玉虫色の第2条

 「仏独間の条約に準ずる」というところに罠が仕掛けてあるのです。1965年の日韓基本条約ではまず、韓国の日本からの独立を認定する必要がありました。

 しかし、交渉の過程では1910年の日韓併合条約の取り扱いで真っ向から意見が対立しました。韓国側は「違法だった」と強く主張、一方、日本側は合法だったとの立場を崩しませんでした。

 結局、日韓基本条約の第2条に「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国の間で結ばれたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」と入れることで折り合いを付けたのです。

 韓国政府は国民に、第2条が示すように併合条約は初めから無効だったことで合意したと説明しました。日本の外務省も「妥協のために両国が知恵を絞って作った玉虫色の条項」と自賛してきました。

 しかし、少し考えればこれらの説明の怪しさに気付きます。「もはや無効」(already null and void)という文言は「過去には有効だった」ことを強く示唆するからです。これもあって韓国では「植民地だった過去」を完全に否定する新たな日韓基本条約を結び直そう、との声が高まっています。

 ただ、基本条約を結び直すのは大事です。時間をかけて交渉するうちに、日本に意図を見透かされてしまう。そこで条約よりも簡単な共同宣言によって過去を書き直す手口を採用したと思われます。

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