駅から消える「時刻表」「時計」「みどりの窓口」… 撤去の背景にあった「SDGs圧」「自治体とのバトル」の真相

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 ホームにあって当たり前だったもの――。全国の駅から「時刻表」や「時計」が消えつつある。さらに有人の窓口も閉鎖が進むなど、注意深く観察してみると、以前とは微妙に変化した駅の姿が見えてくる。その背景を取材した。

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 都内練馬区在住の男性(71)が困惑気味にこう話す。

「退院後、久しぶりに出掛けようと思ったら、最寄りの駅から時刻表がなくなっていて驚いた。代わりにQRコードが表示されていたが、スマホは携帯しているものの、もっぱら利用は通話だけ。目が悪くてスマホの小さな画面は見づらいし、操作も手間で検索は難儀で仕方ない。時刻表は大きな掲示で見やすく、1日の運行時刻がすべてわかるので予定も立てやすかったのだが……」

 駅のホームから時刻表を撤去する動きは、2017年のJR西日本の取り組みが最初という。以降、19年にJR東日本、21年のJR東海、東武鉄道と続き、22年から撤去を始めた西武鉄道は今年3月のダイヤ改定を機に92駅のうち3駅を残して時刻表をなくした。

 名古屋市営地下鉄・桜通線も今年8月、全駅でホームから時刻表を撤去。その理由としてコスト削減を挙げ、「ダイヤ改定が行われるたび、新たに時刻表を作成・設置するのに数百万円がかかる。他の路線についてはこれから検討したい」(名古屋市交通局)と話す。

 一方で、東京メトロや近鉄、阪急などの鉄道会社は時刻表をこれまで通り掲示しており、対応は分かれている。

時計も消える

 鉄道ライターの話。

「時刻表が撤去された後の案内看板などのスペースには、代わってQRコードが掲示され、スマホで読み取ると各社の時刻表のページなどに飛ぶようになっている。時刻表がなくなったことに気づかない若い世代の利用客も多い反面、高齢者には戸惑いの声も広がっていると聞きます。スマホの普及やコスト削減などが理由に挙げられますが、一方でダイヤ改定のたびに既存のものを廃棄し、イチからつくり直す時刻表は“昨今のSDGsの流れにそぐわない”との指摘は以前からありました」

 JR東日本によると、時刻表は主に「合成樹脂系シート」などが用いられ、一部の駅では紙製の時刻表も使用されているという。ダイヤが改正されるとシートの差し替えなどが行われるが、紙の場合、気温の変化による劣化などで印字の耐久性に問題が生じるケースも。そのため「電子ペーパーなどの新技術の活用も併せて研究している。引き続き、環境負荷の軽減に継続的に取り組んでまいります」(「JR東日本」コーポレート・コミュニケーション部)と話した。

 時刻表だけでなく、時計も駅から消えつつある。JR東日本では21年から約500駅を対象に撤去の計画を順次進めており、JR東海も今年3月末までに16駅で撤去。その理由として「携帯電話や電波式腕時計の普及など、お客様ご自身で正確な時刻を把握できる手段が増えている」(JR東海広報室)ことを挙げた。

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