天才・堀内恒夫がV9時代の日本シリーズ“奇策合戦”を明かす

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奇策をやめた巨人

「でも巨人もさ、指揮官がそんな奇策に走ったから乱打戦になって、負けてしまいましたよ(結果は6対8)」

 関本が苦笑する。2回まで待たされた高橋一は4回途中で降板。巨人は4本のホームランを打ちながら投手陣が12四死球を与える乱調で落とした。

 面白いのは、その後の巨人と阪急の対応の違いだ。巨人は奇策をやめ、第3戦は当初の予定どおり関本を先発させて完投勝ち、第4戦は堀内が完投、第5戦は高橋一が完投と「王道」に戻って4勝1敗でV7を達成した。阪急は、第3戦もまた偵察メンバーを入れた。

 改めてV9の戦歴を検証すると、知られざる勝負のあやがまだ隠されていた。

(敬称略)

小林信也(こばやしのぶや)
スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年11月9日号掲載

アスリート列伝 覚醒の時 拡大版「『巨人V9』から半世紀 投手編  対『野村監督』『福本豊の足』秘話 『堀内恒夫』が明かす日本シリーズ“奇策合戦”」より

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