FA藤浪晋太郎の微妙な立場 やはりネックとなるのは…米国人記者は「阪神に帰るのか?」

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スプリング・キャンプになっても決まらない?

 日本時間11月3日、メジャーリーグ機構はワールドシリーズの終了を受けて今オフにフリーエージェント(以下=FA)になる選手130人を発表した。そのリストにはオリオールズの藤浪晋太郎(29)の名前も記載されていた。

「今オフのFA市場の主役はエンゼルスの大谷翔平(29)です。アメリカ4大プロスポーツ(野球、バスケット、アメリカンフットボール、アイスホッケー)史上最高額となる、総額5億ドル(約750億円)超の契約も予想されています。エンゼルスはクオリファイング・オファー(以下=QO)を提示するものと思われます」(米国人ライター)

 QOとは、各球団がFA選手に対し、決まった金額での1年契約を求めるもの。年俸はメジャーリーグの年俸ランキング上位125選手の平均値によって決められ、今オフの金額は2032万5000ドル(約30億5000万円)とされる。球団が選手にQOを提示する期限は日本時間7日早朝。選手は同15日早朝までにQOを受託するか拒否するかを決定しなければならない。

「大谷は拒否するとみられていますが、QO以下の年俸選手の交渉は、FAリストの中にある有力選手の契約が終わってからになります。スプリング・キャンプが始まっても去就が決まらない選手もいますよ」(同)

 藤浪の今季年俸は、325万ドル(約4億2250万円)。QO以下だ。

「この制度が始まったのは2012年ですが、今オフ、初めて上位125人の平均年俸が2000万ドルを超えたんです」(前出・同)

 昨年オフ、本塁打王のアーロン・ジャッジ(31)がQOを拒否してから再びヤンキースと交渉し、残留したケースもある。年俸325万ドルの藤浪に対し、オリオールズがQOの2032万5000ドルを提示することはまずない。いったんFAになってからの交渉、それも、交渉が佳境を迎えるのは2月のスプリング・キャンプが始まるギリギリとなるだろう。

 一方、気になる情報もある。米国内では以前から「藤浪の残留は厳しい」と見られていたというのだ。

人気と実力は別

 藤浪の23年のトータル成績は64試合登板、7勝8敗5ホールド2セーブ。防御率は7.18。7月のオリオールズ移籍後は30試合に全てリリーフで登板し、防御率4.85。最初に入団したアスレチックスとは「1年325万ドル(約4億2250万円)」で契約し、それをオリオールズが引き継いだ。したがって、シーズン終了と同時にいったん契約は切れるわけだが、MLB全体の平均年俸(441万4184ドル=約5億5600万円)以下の選手であっても、必要な戦力であれば、残留交渉のアタリはつけておくものである。しかし、オリオールズ球団サイドにはそうした形跡が全く見られない。

「選手としての人気はあり、登板するとスタンドが湧くこともありました。本人も、チームに貢献したという自覚はあったと思います。ただ、好不調の波が激しいというよりも、投げてみなければどうなるか分からないタイプのピッチャーだと思います。首脳陣からすると、計算の立たないピッチャーでもあります」(現地記者)

 ファンを喜ばせることも大事だが、勝負の世界にいる以上、チームが「勝つ」ことは最優先である。剛速球は魅力でも、制球力のないピッチャーは怖くて使えないということだ。

「18、19、21年のオリオールズはシーズン100敗強の弱いチームでしたが、その間に若手がしっかりと育っており、今季は地区優勝という形で実を結びました。今ではマイナーにも有望な若手がたくさんいて、枠が空くのを待っている状態です」(同)

 実際、選手のモチベーションを高めることでは定評のあるブランドン・ハイド監督(50)も「どちらの藤浪が出てくるのか分からない」とこぼしていた。四球連発で自滅するときもあれば、剛速球で相手打者をきりきり舞いさせる試合もある。そうかと思うのと次の登板ではいきなり死球。また、「ブルペンでは絶好調でも、マウンドに立ったら別人に」という試合もあった。

 シーズン後半で30試合に登板、防御率4点台のピッチャーであれば、昇格の順番を待つマイナーの若手投手でも残せる数字ではある。とはいえ、同時にこんな話もある。

「絶対的守護神だったフェリックス・バティスタ(28)がシーズン後半、右肘を負傷しました。その後の検査でトミー・ジョン手術を受けることが決まりました。24年は全休となるバティスタ不在の代わりを、藤浪に埋めてもらおうと考えるかもしれません。ただ、契約金はかなり安くなると思います」(前出・同)

 バティスタ不在の余波は、NPBにも及んでいた。今オフ、NPBからメジャーリーグ移籍を狙う日本人投手といえば、日本シリーズ第6戦で完投勝利を収めたオリックス・山本由伸(25)が真っ先に思い浮かぶが、米球界では楽天イーグルスの守護神・松井裕樹(28)も注目されている。オリオールズのように救援タイプのピッチャーを補強しようとしているチームは「高額マネーでの争奪戦になる山本よりも松井を」と考えるようになったのだ。

「福岡ソフトバンクホークスのロベルト・オスナ(28)も去就問題で揺れています。彼はメジャーでも実績があり、2季78試合で21ホールド36セーブ、防御率0.66の好成績を残しています。20年に右肘を故障しましたが、完全に治ったと判断して良いでしょう。オスナはNPBに行く前から『優勝争いのできるチームでプレーしたい』と言っていたので、オリオールズが正式にオファーを出せば一気に話もまとまりそう」(前出・米国人ライター)

 19年ア・リーグセーブ王がMLBに帰還するとなれば、「バティスタの穴を藤浪で」の声もトーンダウンしていくかもしれない。

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