次々と殺される20年前のいじめっ子たち、犯人は… ひと味違う韓国「サスペンスドラマ」ベスト4

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 韓国ドラマはどんなジャンルの作品であれ、サスペンス要素が必ず盛り込まれている。一度見始めると目を離せなくなり、次が気になって気になって、下手をすれば一気見してしまうのは、ハラハラドキドキさせる要素の盛り込み方が巧妙だからだ。そしてそれらを前面に出したサスペンスこそが、最も面白いジャンルと言える。ウェルメイドな作品はもちろん無数にあるのだが、今回は一般にはあまり知られていないが極上の、一味違う大人のサスペンスを動画配信サービスで視聴可能な作品に絞って紹介したい。【ライター・渥美志保】

ハードボイルドな女性同士の戦い

 マスクを付けた女性が踊るきらびやかだが異様なビジュアルが話題になった「マスクガール」(Netflixで配信中、全7話)は、ひとりの女性の転落を描くサスペンスだ。

 主人公のキム・モミは、幼い頃からアイドルに憧れ、他人とは違う人生を夢見てきたが、27歳になり結局は地味で冴えないOLになった。唯一、マスクをつけたセクシー系ライブ配信者「マスクガール」として男たちの欲望に塗れた視線を一身に浴びるときだけが、本当の自分でいられる瞬間だ。男たちの欲望に踊らされるうちに殺人を犯してしまった彼女は、この世で最も執拗な追っ手――一人息子を殺され復讐に燃える(しかも親子の結びつきが特に強いとされる韓国の)母親ギョンジャ(ヨム・ヘラン)に追い詰められてゆく。

 前半の見どころは、何もかも失ったマスクガールの転落と逃亡劇、そして後半の見どころは、モミの娘を狙うギョンジャとの戦いである。モミは3人1役で演じ分けられており、「マスクガール」のイ・ハンビョル、整形後の30代は元AFTERSCHOOLのナナ、40代のモミを演じるのはコ・ヒョンジョンだ。そして、モミを追うギョンジャは韓国芸能界屈指の名脇役ヨム・ヘランが演じている。

 当然ながらある種のフェミニズム的な作品でもあり、前半で視聴者は「女をモノ扱いする男」に憤るだろうが、そうした価値観は上の世代の女性(母親)にも根付いており、自分たちを苦しめていることにもやがて気づく。時に母親が娘に言う「美しくないなら身の程を知れ」「息子が悪いのは嫁のせい」というような呪いの言葉がそれである。このドラマはそうした世代間の対立をアクションとして可視化する。そして悪しき価値観を断ち切るには母親を殺さねばならない。キラキラした毒に満ちた女子サスペンスは、恐ろしくハードボイルドでもある。「『女だから』なんて絶対に言わせない」という熾烈さだ。

連続殺人鬼との絆

 Netflixで昨年末に配信がスタートした「サムバディ」(全8話)は、出会い系アプリを通じて起こる連続殺人事件をモチーフに、アスペルガー症候群のアプリ開発者ソム(カン・ヘリム)と、連続殺人鬼ユノ(キム・ヨングァン)の恋愛にも似た奇妙な絆を描いた作品だ。

 自身が開発したアプリ「サムバディ」の中で怪しげな男・ユノに目星をつけたソムは、彼がまるでAIのように無感情に機械的に共感を示し、女性たちを罠にはめていることに気づく。感情や共感の欠如を自覚し、他人を真似ることで社会生活を送るソムは、ユノが「自分を理解する唯一の他者」ではないかと思い始める。

 ドラマの見どころは、極めてクールで静かな映像の中、ユノによって次々と実行される殺人である。そこには快楽があるのだろうが、感情の動きは微塵も感じられず、それゆえに得体のしれない恐怖が漂う。この感情の欠落はソムにも共通する。

 シビれるのは、この2人の感覚や関係が「誰だって寂しい」とか「愛しているから殺せない」という、生ぬるい一般論にまったくもって回収されないことだ。ユノは「ただ殺したいから」人を殺し、ある意味ではソムのことも「スペシャルな獲物」としてしか見ていない。ソムはソムで「ユノが自分を殺そうとしていること」を同類ゆえに理解し、だがそれに対する恐怖よりも「この人なら愛せるかもしれない」という期待が勝ってしまう。

 ラブシーンがいつ殺人の前戯にならないとも限らない2人の関係は、まさにエロスとタナトスのスリリングなせめぎあいなのだ。さらにこの2人をじわじわと追い詰めてゆくのが、ユノに殺されかけて生還した車椅子の凄腕女刑事と、その親友でレズビアンの巫女である。設定の斬新さもさることながら、愛と性をめぐる様々な孤独が描かれるサスペンスといっていい。

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