破裂すれば「くも膜下出血」…「脳動脈瘤」の手術、開頭とカテーテルの長所と短所を名医が解説

ドクター新潮 ライフ

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どちらの手術法にもメリットとデメリットが

 では患者にとって、どちらの手術が有益なのか。水谷主任教授は、「双方の治療にはそれぞれの長所、短所があります」と前置きし、相違点の大要を以下のように解説する。

「開頭クリッピング術の最大の長所は、根治率の高さです。再発率はわずか1%台で、根治治療法と言ってもいいでしょう。血管内治療が苦手とするような、動脈瘤の途中から血管が出ているケースや末梢部の動脈瘤などにも対応可能です。特に脳の表面に近い中大脳動脈瘤に対しては、ほとんど開頭術が行われています。また、術中に動脈瘤が破裂するようなアクシデントが起きても、すぐに対応ができます。すでに動脈瘤が破壊してクモ膜下出血となり、血流障害を起こして脳圧が上昇(亢進)している重症患者も、脳内を減圧することで命を救える確率が高くなります」

 一方、脳血管内治療の長所はなんといっても低侵襲性(痛みなどが少ない)と、開頭ではリスクが高いとされる脳底動脈瘤などの深部の動脈瘤や、大型巨大動脈瘤に対して治療可能な場合が多いことである。

「手術時間が短く、術後の入院日数も開頭の10日~14日より少ない1週間以内です。ただし、コブ状の動脈瘤にコイルを詰める場合、再発率は10%超。コイルを詰めても、血液が入り込む隙間が残ってしまうことがあるからです。ただ、最近は根治を目指せる特殊なステントであるフローダイバーターも徐々に広まっています。ただし、ステントやフローダイバーターを使う場合は血栓予防の薬を飲むことになり、別の手術をするときなどに血が止まりにくくなるというリスクがあります。また、薬をいつまで続けるのかという指標が完全には確立されていません」

 重度の腎機能障害や造影剤アレルギー、血管が弯曲・蛇行しておりカテーテルの挿入が困難な場合は血管内治療ができない場合がある。まさに一長一短がある2通りの施術法だ。

「手術の必要性やどちらの手術にすべきかの判断は、患者さんの希望に耳を傾けながら、まずは安全性重視で病態や年齢、持病の有無、既往歴などを検討し、最終的にそれぞれの手術を得意とする医師たちと意見を交換して総合的に下します。脳動脈瘤が破裂する可能性は場所や大きさ、形状などによって変わりますから、まずは脳神経外科医の診察を受けて、破裂リスクと治療の安全性、リスクをしっかり聞くことが肝要です」

水谷徹(みずたに・とおる)
1959年、大阪府生まれ。1984年東京大学医学部を卒業。同大学神経外科、会津中央病院(福島県会津若松市)、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)、多摩医療センターなどを経て2012年から現職。脳動脈瘤のカリスマ医師と言われている。趣味は渓流釣り。穴場を見つけに海外にまで足を運ぶ。

デイリー新潮編集部

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