低強度の運動で「ビジネス脳」が鍛えられる! 「きつい運動」よりオススメの理由とは

ドクター新潮 ライフ

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 周囲に関心が向かなくなる、記憶が曖昧になる、同じ話を繰り返す、見境なく感情的になる……。いずれも脳の老化にともない顕著となる現象だという。こうした「老人脳」はどうすれば防げるのか。専門家が語る「低強度運動」のススメ。【征矢英昭/筑波大学体育系教授、ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター副センター長】

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 運動が脳機能、とりわけ認知機能の改善に効果をもたらすことが明らかになってきていますが、どんな条件が良いのかは、まだよく分かっていません。WHOや米国のスポーツ医学会は中・高強度の運動をリハビリテーション・運動療法として推奨しており、脳機能改善にもそれらを勧める傾向があるため、強度ごとの改善効果は判明しないままでした。そうした運動療法というのは、ともすれば“投薬の代わりに運動しなさい”といった押し付け、義務のような性質を帯びることもありました。

 とはいえ、いかに治療のための運動でも遊びや楽しみの要素は大切だと思います。まして筋トレなどの中・高強度運動は、血中乳酸濃度の増加などストレスがかかり、高齢者にとってはハードルが高いと言わざるを得ません。

低強度運動をラットで実験した結果…

 そこで私は、これまで世間では「年寄りの冷や水」程度にしか思われていなかった低強度運動が脳機能にもたらす改善効果について研究を試みました。人ではまだ分かっていませんが、まずラットで実験したところ、神経新生が活発になり、記憶能の向上がみられました。その背景となる海馬内の化学物質の発現についても、高強度よりむしろ低強度運動で多いことが確認できました。

 人間においても、たった10分の超低強度のペダリングで直後に海馬が活性化し、記憶能が向上することがMRIなどの脳画像分析で確認されました。米国では1年にわたる中・高強度運動が海馬を肥大させることが報告されていますが、もっと短期間で楽に効果が得られると考えています。

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