いろいろな場所に出かける人は幸福度が上がる! 脳を老化させないために必要な移動、旅行の習慣

ドクター新潮 ライフ

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場所を替えると記憶力が上がる?

 移動によって幸福度が上がり、認知症の原因の一つとされているストレスを感じにくくなることも「老人脳」を遠ざけるためには重要です。これは徒歩に限らず、車や公共交通機関でも構いません。大切なのは、行ったことのない場所に足を運び、見たことのない光景を目にすること。道順などを意識的に記憶しようとしなくても、ほぼ自動的に脳が「新しい場所」を認識して活性化します。そうした短期記憶が、記憶力全体を向上させていくのです。

 もうひとつ興味深いデータがあります。同じ場所で単語を覚えてもらったグループと、場所を替えながら覚えてもらったグループとでは、後者の方が記憶できる単語の数が50%も上回ったという調査結果が、米国ミシガン大の研究で明らかになっています。1カ所でずっと学習しているというのは、脳にとって好ましくないわけです。ビジネスマンでも日々、同じ場所を行き来して同じものを食べ、同じ人と付き合ってという変化のない生活をしている人が多いのですが、そうした生活は神経新生が起こりにくいともいえます。

新しい場所に行くのは良いことづくめ

 新しい場所に赴くということには、別の効果もあります。脳の老化防止には柔軟性、開放性という要素が重要なのですが、人間は齢(よわい)を重ねると新しいものに対して消極的になっていきます。脳の「確証バイアス」が働き、自身の生命を守るためにこれまでの考え方を保とうとするわけです。対して、新しいことにチャレンジする人は脳が老化しにくく、そのメカニズムとして海馬が確証バイアスにも影響している可能性が示されています。

 確証バイアスに関わっている前頭前野のpMFCという部分が、海馬からの情報が前頭前野に伝わる場所のすぐ近くにあるという事実が判明したと、最近の「ネイチャー」誌の論文が伝えています。

 私たちは、過去に体験し、記憶してきたことをベースに価値観や信念を作り出し、それが固定観念となっていくのですが、海馬が活性化するとpMFCも活性化し得る。反対に海馬に入る情報が少なくなれば固定観念がそのまま保たれてしまう。つまり、新しい場所へ出かけることは「幸福度」「記憶力」「新しいことへの意欲」「思考の柔軟性」といった点からも良いことずくめだというわけです。

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