集団提訴に暗雲「ブッキングドットコム」巨額未払い問題の行方 契約書にあった“悪魔の一文”とオーナーが告白した「これは巨象とアリの戦いだ」の真意

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 宿泊料金の未払い問題で揺れる世界最大級の宿泊予約サイト「ブッキングドットコム(Booking.com)」に対する集団訴訟が10月20日、東京地裁に提起された。しかし裁判の行方に影を落とす“トラップ”の存在とともに、同社の徹底した“パートナー軽視”の振る舞いを当事者たちが告発する。

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 デイリー新潮が入手した訴状によると、原告に名を連ねた企業(宿泊施設)は11社で、被告はオランダにあるブッキングドットコム本社と日本法人。事前予約の際にブッキングドットコムが宿泊客から預かった宿泊費の施設側への未払い分など総額で約3669万円の損害賠償を求めた内容となっている。

 提訴に至った経緯について、原告側代理人の加藤博太郎弁護士がこう話す。

「原告となった11社以外にも、全国の宿泊施設の50人超のオーナーから相談が寄せられており、被害総額は億単位になる可能性が高い。各オーナーへの入金が滞り始めたのは今年夏頃からですが、ブッキングドットコム側はこの間、『システムの不具合』や『海外送金のミス』などと釈明してきました。しかし強く抗議したオーナーには未払い金の一部が入金されるなど、“システム障害によって送金不能に陥った”との説明には釈然としない部分が残ります。しかも、これだけの騒動になっているというのに、いまだ納得のいく説明だけでなく、支払い期日すら明らかにしていません」

 同様の被害は日本以外でも起きているとされ、世界での被害総額は「数百億円に達する」との報道もある。

「棄却」の可能性

 影響は深刻で、すでに「従業員の給与が3カ月未払い」の状態に陥ったり、「廃業を決めた」宿泊施設まで出ているという。

 提訴によって事態の打開に期待がかかる一方で、加藤弁護士によれば、審理に入る前に「棄却される」可能性もあり得るのだという。

「宿泊施設側はオランダ本社とパートナー契約を締結していますが、交わされた契約書のなかにはいずれも“契約上のトラブル解決はオランダの裁判所でのみ可能”との一文が明記されています。もし日本の裁判所が同文を理由に棄却すれば、オランダでの提訴も考慮せざるを得なくなる」(加藤弁護士)

 実際に契約書を入手して確認すると、〈本契約はオランダの法律のみに準拠し、同法に従い解釈されるものとする。本契約に起因または関連する紛争は、オランダ、アムステルダムの管轄裁判所に専属的に服し、同裁判所に処理されるものとする〉との文章が「雑則」のなかに存在した。

「そのため東京地裁への提訴に際しては“契約上の紛争”でなく、ブッキングドットコムが預かった宿泊料金を払わずに領得するのは“横領行為”であり、“故意による不法行為”に当たるとの位置付けで損害賠償請求を行いました」(加藤弁護士)

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