“究極の隠し玉”と呼ばれた男も…まさかの「ドラ1位指名」で、プロで飛躍した名選手

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大学中退後、消息不明に

 今年もプロ野球ドラフト会議が10月26日に開催される。注目の“ドラフトの目玉”が複数の球団から競合指名される一方で、“隠し玉”や外れ1位など、本人も予想していなかったビックリ仰天のドラ1指名を受けた選手がいる。まさかの1位指名を経て、プロで成功した男たちを紹介する。【久保田龍雄/ライター】

 60年近いドラフトの歴史の中で、“究極の隠し玉”として知られるのが、1986年の西武1位・森山良二である。

 福岡大大濠高時代の81年夏に甲子園に出場、大会屈指の好投手と注目されたが、早稲田大進学を目指して二浪したあと、北九州大2部に入学。昼間はトレーニングセンターのインストラクター、野球部では4番エースとして通算7勝、10本塁打と投打二刀流で活躍した。だが、85年12月に中退し、その後、消息不明になっていた。

 実は、高校時代から森山の素質を高く評価していた西武・根本陸夫管理部長が密かに入団を打診し、翌年のドラフトの隠し玉として、野球部のない北九州市の食品会社・ONO(オーエヌオー)フーズに在籍させていたのだ。

 同社の小野昭治社長は早大野球部OBで、根本管理部長とは旧知の仲であり、担当の楠城徹スカウトも早大出身で小野社長の後輩とあって、森山の存在を他球団に知られないまま、下位で指名することも可能に思われた。

「プロでやっていけるか不安で一杯」

 ところが、米独立リーグ、サンノゼ・ビーズで「西武のユニホームを着た体格のいい選手」が近鉄の駐米スカウトに目撃されたことなどから、ドラフト当日、一部のスポーツ紙に「隠し玉西武」とすっぱ抜かれてしまう。

 この結果、西武は他球団に先を越されないよう森山を単独1位指名。根本管理部長が「将来指導者や球団の要職に就いてチームに貢献してくれる人物」と見込んだことも、1位にした理由だったという。

「まさか1位指名とは……。ただただ驚いているところですよ。本当に僕みたいな者がプロでやっていけるか不安で一杯」と思いもよらぬトップ指名にビックリ仰天した森山だったが、2年目の88年にパームボールを武器に10勝を挙げ、新人王を獲得。現役引退後も根本管理部長が予見したとおり、西武、横浜、楽天、ソフトバンクのコーチを歴任している。

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