「病院選びで一番大切なのは看護師」「看護師数が最も充実している県は…」医師が提言 「大卒看護師10%増加で死亡率は5%低下」という調査も

ドクター新潮 ライフ

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 さまざまな機能が集中する首都・東京。しかし、そんな東京に忍び寄る「医療崩壊」の足音に気付いている人は少ない。人口の多い大都市圏ほど看護師が不足しているという矛盾した真実。われわれの命に直結するこの構造的な問題について、医師の上昌広氏が警鐘を鳴らす。

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 首都圏など大都市に住んでいる人たちは、きっと「医療崩壊」とか「医療難民」と聞いてもピンとこないでしょう。

 一方、地方に住まわれる方の中には「自分たちの地域が無医村になってしまうんじゃないか」と危惧している方もおられるかもしれません。

 ですが、実態は正反対。何千万人という人たちが暮らす東京やその周辺都市こそ、医療崩壊の危機にさらされている。特に深刻なのが、看護師不足の問題です。

 看護師が不足するとどうなるか。一言で言えば、患者の死亡率が上がります。

 日本では「看護師」というと、医者のサポート役とか患者の身の回りのお世話をしてくれる人というイメージばかりが先行します。「白衣の天使」と聞けば“患者に尽くす女性”というナース像を連想する人も多いのではないでしょうか。しかし言うまでもなく、看護師は極めてプロフェッショナルな医療従事者です。

4年制大卒の看護師が10%増えると…

 看護師の数が減ると、まず増えるのが医療事故です。「白い巨塔」など医療ドラマの影響もあり、医療事故といえば医者の手術ミスなどがクローズアップされがちですが、点滴がうまく入っていなかったとか、喉に食べ物を詰まらせたとか、トイレに行こうとして転んだとか、病院ではありとあらゆるシーンで事故が起こり得る。そんな病院で最も長く入院患者と接し、事故の兆しに気付けるのは看護師ですから、看護師の人手不足で医療事故が増えるのは必然です。

 2002年、アメリカのペンシルべニア大学で行われたある研究が世界中の注目を集めました。168の病院、1万人以上の看護師、23万人以上の患者を対象にしたこの研究では、病院で働く看護師の教育レベルや員数と、外科や救急病棟の患者の早期死亡率との相関が調査されました。この調査によれば、病棟に4年制大学を卒業した看護師が10%増えると、患者の死亡率が5%減るという結果が出ました。つまり、レベルの高い看護師が少なければ少ないほど、患者の生命にかかわる医療事故の発生率が上がっていたのです。ヨーロッパでもこれと同様の研究が行われており、急性期医療の現場で看護師の質と量が患者の生死に直結するというのは、今や世界中で常識になりつつあります。

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