初サンマ1匹“2万5000円”で「大間のマグロ」超え…大衆魚が“高級魚”になった深刻すぎる裏事情

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不漁の要因は“沖合化”

 大不振に陥っているサンマ。今年も厳しい漁模様となりそうだ。

 水産庁の統計によれば、2022年の漁獲量は約1万8000トンと、4年連続で過去最低を更新。ピーク時の1958年は約58万トンだったが、わずか3%に激減した。今年の来遊量も22年と同様の「低水準」と予測され、残念だが不漁の可能性が高い。

 国の研究機関によると、不漁の要因の1つが沖合化だ。かつてサンマは、秋に冷たい親潮に乗って日本近海に来遊していた。ところが、近年は親潮の流れが弱まり、道東や三陸沖の海水温上昇もあって沿岸に近寄らず、沖合の遠い公海に分布が移ったとみられる。以前は漁船が日帰りで水揚げしていたが、数年前から1000キロ以上離れた漁場に片道数日かけて獲りに行くケースが少なくない。

 小型化も深刻だ。沖合は餌のプランクトンが少なく、成長が遅れる。サンマの寿命は約2年だが、成長の悪化で一生の産卵回数が2回から1回に減る傾向もみられるという。沖合化で成長が鈍り、サンマの数も減る「負の連鎖」が起きているというのだ。

 台湾や中国など外国船による公海での先取りも指摘されるが、日本より漁獲量が多くなった台湾船も「今はあまり獲れていないようだ」と日本の水産業者。危機的状況のサンマが回復するまで「いっそ禁漁もやむを得ないのでは」との意見もある。

選ぶなら「小顔」がお薦め

 焦げ目がついたパリパリの皮に、じゅわっと脂がにじみ出るふっくらした身、ほろ苦さが食通に好まれる内臓のワタ…。サンマ好きは多いが、不漁で高級化と小型化が進み、人気に陰りが見える。

 かつてスーパーなどでは、1匹100円以下の特売が恒例だった。家計に優しく、ボリューム感のある塩焼きを1人1匹食べるのが秋の日常で、「きょうもまたサンマ~?」と飽き飽きした人もいるだろう。一方、塩焼きだけでは物足りず、「一度に10匹をまとめ買いして、半分をすぐ刺し身にして食べていた」という年配のファンもいた。

 不漁時代に突入し、都内の小売店では特売の光景が消えた。今年は初物を1匹2000円前後で並べる店も。9月上旬には、同300~400円で販売するスーパーもあった。消費者にいまだ格安100円の印象が強く残るせいか、「もはや手が届きにくい高級魚」との声が相次ぐ。

 細身も目立つ。豊漁だった十数年前、旧築地市場には大ぶりの1匹約200グラムが多かったが、「今では幻になった」と水産業者。不漁期に入って大型は減り、豊洲市場では今年、重さが半分近い同110~120グラムが中心となっている。

 漁場が遠いため、鮮度にばらつきがある上、小さくなったのに価格が高騰したという割高感も拭えない。秋の主役から陥落し、「もう大衆魚ではなくなった」と豊洲市場関係者は肩を落とす。

 好転の兆しが見えないサンマだが、少ないながらも出回っているので、同市場の魚のプロに店頭で選ぶポイントを聞いた。鮮度は「目が澄んでいて、背中が青黒く、シルバーがきらきら光っていると良い」。魚体は「小顔がお薦めだね。背中が盛り上がっていて、腹に厚みがあるとより脂が乗っている」と説明する。

 小ぶりでもおいしく味わいたいが、落語「目黒のさんま」の殿様が絶賛したようなサンマが待ち遠しい。

岡畠俊典(おかはた・としのり)
時事通信水産部記者。1981年、広島生まれ。2005年、北九州市立大学卒。地方紙での勤務などを経て、2016年に時事通信社に入社。水産部で豊洲市場の取引を中心に取材を続けている。

デイリー新潮編集部

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