手に入りやすくなった若返りサプリ「NMN」の選び方は? 老化研究の世界的権威が「健康寿命が延びる可能性が高いとみている」

ドクター新潮 ライフ

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安い商品も市場に出回っているが…

 以前に、ホットドッグ1個で36分の健康寿命が失われる、という研究データをご紹介したが、

「ホットドッグのようなものを大量に食べたり、座り過ぎの生活を続けることは、全て慢性炎症につながっているのです。今、老化研究の分野では、炎症を意味するインフラメーションと加齢を意味するエイジングを組み合わせた、インフラメイジングという造語がよく使われています。そして、このインフラメイジングがNADを減少させることが分かってきたのです」

 そのNADを補うために必要なNMN。今井氏はその「摂取方法」について警鐘を鳴らす。

「特に日本では、NMN点滴療法というものが広まっています。私はこのNMN点滴療法に関しては、非常に気を付ける必要がある、と言い続けています。実は、NMNを摂取し過ぎると、NADを逆に壊してしまう酵素のスイッチがオンになることが分かっているのです。つまり、むやみやたらに体内にNMNを入れるのは良くない、といえると思います」

 これはサプリに関しても同様で、

「最近、NMNの原料の価格が暴落しており、数年前の10分の1程度になっています。大量のNMNを摂取しようと思えばできるような安い商品も市場に出回っているのです」

原料価格が暴落した理由

 以前、本誌(「週刊新潮」)でNMNについて報じた際にご紹介した「ミライラボバイオサイエンス」社の商品は、お手頃なものでも60カプセル入りで2万5380円。しかし、ネットで探してみると、同量入りで5千円を切っている商品もある。

「最近ある会社が、“1日に3グラムのNMNを摂取しても安全だった”という臨床試験の結果を発表しました。それによると、NADが1.2倍に増えたというのですが、250ミリグラムの投与でもそれくらい増える。つまり、12倍の量を摂取してもNADは同じくらいしか増えていないことになる。もちろん発表ではそこには全く触れていません」(同)

 NMNの原料価格が暴落した背景には、

「技術が改善され、純度の高い物が安く製造できるようになったことがあります。前のように高価な物だけが絶対に安心という時代はもう終わり、安くてもきちんとした品質の物が出回っている。問題は、どれが安心できるものなのかが分からないことで、認証制度を取り入れてはどうか、といった議論が水面下で行われています」

「日本では薬にするのは望ましくない」

 今井氏はそう明かした上で次のように提案する。

「アメリカではNMNを使った創薬の動きが始まっていますが、日本では、薬にする方向は必ずしも望ましいとはいえないと思っています。薬にしてしまうと処方箋がないと使えないので、病気の予防に利用できないのです。NMNは、健康寿命が長くなるように、健康な体の機能を保つために、日々正しく使うことが重要なのです」

週刊新潮 2023年9月7日号掲載

特別読物「科学的データで見る『若返り』『死亡リスク』の分岐点」より

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