落語家・五街道雲助が人間国宝に選ばれた複雑な事情とは? 「本人も戸惑いを感じている様子」
他に4人の有資格者が
昭和23年に東京・墨田区で生まれた雲助は、明治大学を中退して十代目馬生に入門した。人情噺から滑稽噺、怪談噺と幅広い演目に果敢に挑み、「名人長二」「双蝶々」など、40作もの埋もれていた古典噺を復活させたことでも知られる。弟子にも恵まれ、最近も桃月庵白酒(54)、隅田川馬石(54)、蜃気楼龍玉(50)が活躍中だ。
「記者会見では“私でいいのかなあ。なんせ雲助(かごかき)ですから”と自嘲気味に笑いを誘いました。どこか本人も、人間国宝という評価に戸惑いを感じている様子でしたね」
3人目の人間国宝となった小三治の死去は令和3年。以来、落語界では4人目の候補を巡り、多くの噺家の名が取り沙汰されてきた。
さる落語評論家が言う。
「過去の三人は認定の前に、文化庁が主催する芸術祭や芸術選奨で賞を得ていたほか、ミニ文化勲章といわれる紫綬褒章も受章していました。前例に倣うなら、雲助だけでなく、桂文枝(80)、柳家さん喬(75)、立川志の輔(69)、春風亭小朝(68)らも有資格者だったんです」
落語界のバランスへの配慮
ところが、文枝は過去の愛人問題がネックとなり、志の輔と小朝は年齢的に“若い”と見なされたという。
「というワケで、落語界ではさん喬と雲助が有力候補とみられていたのです」
結果、選ばれたのは雲助。その背景には、落語界におけるバランスへの配慮があったという見方もある。
「さん喬の師匠は小三治と同じ小さん。この三人は同じ一門なんです。だから、“4人目は違う亭号からでは”との予想が多かった」
9月には新宿・末廣亭で、冒頭に挙げた4人の追善興行が行われる。
「〈古今亭志ん生没後五十年追善興行〉を謳う中席の公演チラシには〈祝 五街道雲助 人間国宝認定〉との文言もあります。雲助は前半(11~15日)に昼の部でトリを務める予定ですよ」
久々に生きた最高峰の話芸を堪能できそうだ。
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