BRICS拡大の危うさ あまりにまとまりを欠いた国家連合と言わざるを得ない理由

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BRICS拡大後はGDP合計の世界シェア37%に

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)の5カ国は8月22~24日、南アフリカのヨハネスブルグで15回目の首脳会談を開催した。

 広い国土と多くの人口、豊かな天然資源を有するBRICSは、21世紀に入って急成長を遂げている。5カ国合計の国内総生産(GDP)が世界に占めるシェアは、2000年の8%から昨年は26%にまで拡大した。

 ウクライナ戦争により、国際社会におけるグローバルサウスの存在感が高まっていることもBRICSにとって追い風だ。BRICSは、発展途上国から成るグローバルサウスの「勝ち組」グループとして脚光を浴びている。

 飛ぶ鳥を落とす勢いのBRICSは、今回の首脳会談で新たに6カ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟を認めた。正式に加盟申請をした23の国・地域から、アフリカ地域で2カ国、中南米地域で1カ国、中東地域で3カ国が選ばれた形だ。

 BRICSの名称はそのまま維持される見通しだ。ブラジルのルラ大統領は、BRICS拡大後はGDP合計の世界シェアが37%に達すると述べた。そうした背景もあって「拡大したBRICSは欧米主導の国際秩序に対抗する組織になる」との見方が出ているが、はたしてそうだろうか。

アルゼンチンと中東は波乱含みの様相

 新規加盟が決定した国では、早くも暗雲が立ちこめている。

 ルラ大統領の強い後押しで新規加盟が決まったアルゼンチンでは、野党が反対の声を上げている。今年10月の大統領選に先立って行われた予備選選挙で支持率トップを走る野党候補、ハビエル・ミレイ下院議員は「共産主義者たちとは付き合わない」とBRICS加盟に猛反発した。

 現職のフェルナンデス大統領はルラ氏と盟友関係にあり、中国との関係を深めてきた。だが、野党が政権を奪取すれば、BRICS加盟の決定は反故になってしまいかねない。

 中東地域では、米国の同盟国であるサウジアラビアとUAEも波乱含みだ。

 サウジアラビアは米国との関係がぎくしゃくする一方、OPECプラス(OPECとその他の大産油国で構成)の枠組みでロシアとの関係を維持している。昨年末に習近平国家主席の訪問を受け入れて以降は、中国との関係も強化しつつある。

 UAEは「米国が中東地域の安全保障へのコミットを弱めている」との懸念から独自の路線を追求している。中国主導の色が強いBRICSだけに、中東地域での影響力拡大について、米国が横やりを入れてくる可能性は排除できないだろう。

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