東海道新幹線のワゴン販売、赤字じゃないのになぜ終了? 売り上げは「東京-新大阪でたった5万円」との声も

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「お弁当にお茶、ホットコーヒーはいかがでしょうか~」

 そうだなあ、今日は富士山が見えてきたところでお姉さんからビールを買おう、なんて客もいたに違いない。ところが間もなく、東海道新幹線ではそんな声も聞かれなくなる。10月いっぱいで「のぞみ」と「ひかり」でのワゴン販売が終了になるのだ。「こだま」では、すでに2012年に廃止されているので、新幹線開業とともに続いてきた風物詩が姿を消すことになる。

 鉄道ライターが言う。

「ワゴン販売はJR東海の子会社のJR東海パッセンジャーズ(10月1日からJR東海リテイリング・プラス)という会社が行っていますが、販売員はパーサーと呼ばれていて16両編成の新幹線だと3人が配置される。このパーサーが東京から新大阪までの間、列車の中を2~3往復するのですが、仕事はワゴン販売だけではありません。車内に異変が起きていないか巡回したり、お客さんへの緊急対応も任されているのです」

「赤字というわけではありませんが…」

 かなり重要な役割なのだがJR東海に聞いてみると、

「最近は、パーサーの仕事が増えて負担が大きくなっているうえに採用が難しくなっているという事情があります。現状でも新幹線の便によっては3人のところを2人で回している状態で、これがワゴン販売をやめる大きな理由の一つです。また、車内の飲食にしても最近ではホームや駅構内の売店で弁当やビールをお求めになるお客様が増えている。赤字というわけではありませんが、お客様がワゴン販売を利用する割合が下がってきているという事情もあります」(広報担当者)

東京-新大阪間で5万円の売り上げ?

 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏も言うのだ。

「東海道新幹線は列車1本あたり約1300人のお客さんが乗車するのですが、最近のワゴン販売は東京―新大阪間で5万円ぐらいの売り上げしかないと聞いたことがあります。他のJRでも北陸新幹線や東北新幹線などの一部区間ではワゴン販売を行っていませんから時代の流れでしょう。また、乗るのが遅い便のパーサーは到着地での“泊まり”もある。そういう仕事はあまり人気がありませんよね」

 もっともワゴン販売が終わっても名物のアイスなどはホームの自動販売機で買えるし、モバイルオーダーするとグリーン車の乗客に限って持って来てくれるとJR東海は説明する。そこに新幹線旅の楽しみがあるかは分からないけれど。

週刊新潮 2023年8月31日号掲載

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