認知症に希望の新薬! 診断を受けた家族に「絶対にやってはいけないこと」とは? 臨床の最前線に立つ医師が徹底解説

ドクター新潮 ライフ

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 全国で発症者数が600万人を超えるといわれる認知症。「なりたくない病気」ナンバー1との呼び声も高いこの病気の実像を、さまざまな角度から解き明かす。臨床の最前線で治療を続ける慈恵医大の繁田雅弘教授に聞いた、認知症への備え方とは。

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 認知症がかつて「痴呆症」と呼ばれていたことを覚えておられる方も多いでしょう。2000年前後に「痴呆」という言葉の持つネガティブな響きが問題視され、「認知症」という新たな用語が誕生しました。

「認知症」という呼び方は、今やすっかり市民権を得ましたが、果たしてこの“病気”に対する国民の理解が進んだかといえば、首をかしげざるを得ません。例えば、「認知症についてどんなイメージを持っていますか」と尋ねれば、多くの方から次のような答えが返ってくるのではないでしょうか。

「自分では何もできなくなる」「家族のことも分からない」「人格が壊れる」「人間としての尊厳を失う」「もう人生おしまい」……。

 この記事をご覧の読者の中にも「え!? そうじゃないの?」と思った方がおられるかもしれません。確かに、映画や小説、ドキュメンタリー番組では認知症を題材にした悲劇が多数描かれてきましたし、「徘徊中に事故に巻き込まれた」とか「認知症で介護心中」などというニュースも目にします。でも、誤解を恐れずに言うならば、このような事例は全体のうちのごくごく一部。穏やかで人間らしい日常を送っている認知症の方も大勢いらっしゃるのです。

家族の行動が症状を悪化させるケースも

 認知症に対するこのような偏見や先入観は、治療者である私たちにとっても他人事ではありません。そもそも医療からして、認知症に対しては長らく偏見がありました。

 従来、認知症は言葉のやり取りなど人間同士の交流によって治療を試みる精神療法の対象とはされてきませんでした。「認知症の人と実りある対話などできるはずがない」。そんな偏見があったからです。私が医者になった当時も治療といえばほとんどが「諦めさせる治療」。患者本人の意思や希望を聞き取ることなく、はなから「そんなことは無理」「無駄」と決めつけ、医師や家族が管理しやすいよう患者をうまくコントロールしようとしたのです。

 当時と時代は変わりましたが、「痴呆症」を「認知症」に改めたところで、症状に対する正しい理解が伴っていなければ何の意味もありません。本人の気の持ち様や家族の行動が認知症の症状を悪化させるケースも多々ありますから、本人だけでなく家族も認知症を正しく知っておく必要があるのです。

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