「小渕優子幹事長」は実現するのか 岸田首相の「計算」と立ち塞がる「ドリルの記憶」

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 ドドド……。この女性の顔を見ると、つい破壊音を想起する人は少なくあるまい。2014年に事務所が政治資金規正法違反で東京地検特捜部から家宅捜索を受けた際、ハードディスクがドリルで破壊されていたことから、「ドリル優子」の異名を持つことになった小渕優子元経済産業大臣(49)である。あれから9年。小渕氏が次の党役員人事で幹事長に抜擢されるのではないかとの観測が永田町で広がっている。岸田首相の狙いはーー。
 
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最大の魅力は「血統書付き」

 9月半ばに行われる内閣改造・自民党役員人事で注目されているのが、小渕氏の処遇だ。9年前の「ドリル事件」以降、国民の目につく要職からは遠ざけられ、現在は党の組織運営本部長を務めている小渕氏。だが、ここにきて、森喜朗元首相が「華やか舞台にもう一度登場させたい」とエールを送るなど、自民党初となる「女性幹事長誕生」の機運が高まっている。

 大手紙政治部デスクも「十分考えられる」と語る。

「支持率が低迷している岸田首相としても、次の人事で若い女性を抜擢して政権を浮揚させたいところ。小渕氏は、“前科”さえなければ、経験、知名度、新鮮味、どれをとっても抜群に良い。何よりもの取り柄は小渕恵三元首相の娘である点。自民党はなんだかんだ言って“血統書”がモノを言う組織ですから」

真の狙いは「茂木外し」

 だが、小渕氏を幹事長に抜擢するということは、すなわち茂木敏充幹事長を外すことになる。「それこそが岸田首相の狙いです」と別のベテラン記者も続ける。

「党のカネと人事権を握る幹事長職に茂木氏をこのまま据え置けば、自身を脅かす存在になってしまうことを岸田さんは恐れている。いま党内には有力な総理候補が少ない。萩生田光一政調会長や河野太郎デジタル相は、それぞれ統一教会問題やマイナカード問題を抱えて具合が悪い。岸田さんにとって今、マークしなければならないのは茂木氏くらいなのです。小渕氏は総理を狙うとしてはまだ若すぎますしね」

 茂木氏は党内第3位の勢力を持つ平成研究会の現オーナーで、麻生太郎副総理とも近い。露骨に外してしまえば、党内バランスを崩すことになりかねない。だが、茂木派のホープである小渕氏を一本釣りしてしまえば、反発を抑えられるという算段もあると言う。

「というのも『茂木派』とはなっているものの、派閥内で茂木さんの求心力は弱いからです。今でこそ幹事長職にあるので、みな平伏していますが、心から慕っている人は少ない。理由は偉そうだから。6月に亡くなった『参院のドン』こと青木幹雄元官房長官も茂木さんを蛇蝎の如く嫌い、小渕さんの後ろ盾になってきた。平成研の参院議員たちは青木さんの遺志を引き継いでいる。もし小渕幹事長が実現すれば、茂木氏は一気に影響力を失い、『小渕派』へと代替わりするのではないか」(同)

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