プロ注目のショートは“名門校”を退学しても諦めなかった…東海大熊本星翔「百崎蒼生」にスカウト陣が熱視線！
東海大相模では入学早々にベンチ入り
今年の夏の甲子園で、“異色”の高校野球生活を送り、メディアやファンの注目を集めた選手が、東海大熊本星翔（熊本）のショート、百崎蒼生だ。今回の記事では、百崎が「最後の夏」に聖地で見せたプレーとプロ入りの可能性を解説してみたい。【西尾典文／野球ライター】
百崎の名前が、高校野球関係者の間で話題になったのは2年前の春のこと。その年の選抜高校野球で優勝した東海大相模（神奈川）に入学すると、春の県大会でいきなりベンチ入りメンバーに選ばれたのだ。秋の新チームでは、早くもショートのレギュラーとなり、関東大会1回戦の花咲徳栄（埼玉）戦では5打数5安打の“離れ業”を演じている。筆者もこの時のプレーを現地で見ていたが、タイミングを外されてもことごとく、バットの芯でとらえるバッティングはとても1年生とは思えないものがあった。
しかし、ここから百崎の野球人生は“急転”する。些細なことから、チームメイトとの関係がこじれ、入学当時の門馬啓次監督（現・創志学園監督）が退任したこともあって、野球へのモチベーションが低下。翌年春には野球部を退部して、東海大相模を退学することになったのだ。1年秋から活躍していた主力選手の退学には、当時、スカウト陣を含めて各方面から多くの驚きの声が聞かれた。
このまま野球界から“ドロップアウト”してしまうかと思われた百崎だが、その才能を、生まれ故郷である熊本の関係者は見逃さなかった。地元に戻ると、中学時代から親交のあった東海大熊本星翔の野球部員の勧めもあって転校を決意する。高野連の規定では、転校した野球部員は1年間公式戦に出ることはできない。それでも、百崎は、野球を続ける道を選んだ。
県大会では4割近い打率
この話は、すぐに関係者の間で広まり、最終学年となった今春の練習試合には、多くのスカウト陣が視察に訪れたという。百崎は、周囲の期待に応えて攻守にレベルアップを果たし、公式戦復帰となった夏の熊本大会では試合を重ねるごとに調子を上げて、5試合で4割近い打率を残す活躍を見せた。
そして、迎えた夏の甲子園での初戦。対戦相手の浜松開誠館（静岡）のエース、近藤愛斗は145キロ以上のスピードを誇る本格派右腕で、百崎との対決に注目が集まった。
百崎は、第1打席でいきなり持ち味を発揮する。3ボール、1ストライクから近藤が投じた低めの141キロのストレートをとらえると、打球はセンター右へ。一塁を回った百崎はスピードを落とすことなく二塁ベースに到達すると、中継が乱れる間に一気に三塁を陥れた（記録はツーベースとショートのエラー）。
この試合のファーストスイングで、140キロを超えるストレートに完璧に対応し、相手のわずかな隙を逃さない走塁は味方に勢いを与えた。この後、3番打者のショートゴロの間に百崎は生還。チームに先制点をもたらした。
その後、東海大熊本星翔は逆転を許したが、百崎は、1点を追う6回の第4打席で、ツーアウト一・二塁から三遊間をしぶとく破るレフト前ヒットを放っている。相手レフトの見事な返球で二塁走者がホームでアウトになり、惜しくもタイムリーとはならなかったものの、チャンスで高い集中力を発揮している。
結局、東海大熊本星翔は2対5で敗れ、早々に甲子園を去ることになった。だが、百崎は、4打数2安打1四球と3度出塁したほか、守備では、2つのショートゴロを堅実にさばいている。
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