「天地神明に誓って」は“佐村河内氏”も使ったフレーズ ビッグモーター社長の謝罪会見が「最悪のお手本」と呼べる理由

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 中古車販売大手・ビッグモーターの保険金不正受給問題を受け、兼重宏行社長が25日に会見を開いたが、これが実に、謝罪における「最悪のお手本」と言えそうなものだった。私(編集・ライターの中川淳一郎)は元々、広告会社のPR関連部署にいたため、謝罪会見の事例収集や、クライアント企業への想定問答集を作るほか、「メディアトレーニング」という模擬記者会見を実施するなどし、いかに「まともな会見」をするかや、「ネット炎上対策」といった仕事にもこれまで取り組んできた。

セオリーとは真逆

 基本的に兼重氏は、「ワシも経営陣も何も知らなかった」「勝手に現場が暴走した」という主張に終始。従業員が靴下に入れたゴルフボールで車にわざと傷をつけた件については「ゴルフを愛する人への冒涜」と頓珍漢な正義感を見せる始末。

 不正受給に関する「報告を受けて本当、耳を疑った。もうこんなことまでやるのかと愕然としましたね。組織的ということはないと思いますね。個々の工場が、この原因は工場長が指示してやったのでは」「管理不足だった。その中でも社員がやっていいこととやっていけないことがある」との主張も自己保身である。「連携不足」「管理不足」「情報共有を徹底すべきだった」「組織の壁があった」なども不祥事の言い訳としては定番だが「そこを改善させるのが経営者の仕事だろ!」というツッコミが当然押し寄せる。

 不祥事を起こした会社のトップの会見というものは、基本的に「まずは全責任を私と経営陣が取る。そのうえで現場も処分する。警察の捜査にも協力する。被害を受けた人とは話し合う」と訴えかけるしかないのだ。それなのに兼重氏の発言は、このセオリーとは完全に真逆。「もう逃げきれない」案件はすべて事実を言うしかないのだ。何しろ、後で嘘がバレた場合にもっと大事になるからだ。

「一切」と言い切ったせいで

 さらに、我々PRプランナーは「事実関係を断言する、大袈裟な言葉は使ってはいけない」という助言をクライアントにしてきた。経営陣が不正を把握していなかったかについて兼重氏は「『天地神明に誓って』知りませんでした」と言ったが、これを耳にした瞬間、まともな記者ならば疑いを強めることであろう。この言葉は「ゴーストライター騒動」の佐村河内守氏も使った言葉である。

 その他にも疑惑を深める断言する言葉は「100%ない」「断言する」「一切ない」「天に誓ってあり得ない」「まさに私は」「全く関係ない」などがある。いずれもうさんくささ100%の言葉である。そう、安倍晋三元首相が森友問題に関連し、こう大袈裟な発言をしている。

「私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして」「繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい。全く関係ないということは申し上げておきたいと思います」

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