今さら9月3日を「対日戦勝記念日」にしたプーチンの迷走 防大名誉教授は「ナチス・ドイツと同じようにロシアも崩壊する可能性」

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シベリア抑留の悲劇

 戦争が終結してからも日本軍将兵の捕虜には苦難の日々が待っていた。ヨシフ・スターリン(1878~1953)がシベリア抑留を命令したからだ。

《厚生労働省の統計によると、抑留された日本人の総数は57万5000人(うちモンゴル1万4000人)で、そのうち5万5000人(同2000人)が死亡した。抑留者団体やロシアの一部研究者には、死者は6万2000人ないし9万2000人に達するとの見方もある》

《死亡原因の大半は、氷点下40~50度にも達する寒さや、食料不足、劣悪な労働条件と医療などにあった。また、収容所内では、ソ連当局監視の下に「民主化運動」と称する共産主義教育が行われ、仲間の密告やつるし上げが横行した》

 米ソ東西冷戦研究の第一人者で防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏は、「ロシアの民間軍事会社ワグネルは戦争を利権に変えた代表例ですが、プーチン大統領以下、多数の政権幹部が同じことを行い、巨利を貪ってきました」と指摘する。

「いわば戦争をメシの種に使ってきたのです。さらに、ウクライナ侵攻が大義名分の全く存在しない完全な侵略行為であることも明白でしょう。そんなプーチン政権が日本を『軍国主義』と批判したのですから、まさに笑止千万です。日本にはワグネルは存在しません。一体、どちらが真の軍国主義国家なのか、答えは述べるまでもありません」

飢えに苦しむロシア国民

 ロイターは3月27日、「ロシア、今後数年で中所得層縮小へ 格差が拡大=調査」との記事を配信し、ロシアではウクライナ侵攻の影響で貧困化が進んでいると指摘した。

「OECD(経済協力開発機構)がまとめた2020年の世界貧困率ランキングでは、日本は15・7%で12位でした。ロシアは17年の数字が最新で貧困率が11・5%、23位にランキングされています。ところが、欧米各国による経済制裁などの影響でロシアは社会的不平等が拡大、中所得層が縮小する可能性があるとロイターは報じたのです。最悪のシナリオでは、貧困率が20%に達すると予測。これを20年のランキングに当てはめると、3位のコスタリカ(20・5%)と4位のルーマニア(17・5%)の間になります」(前出の記者)

 佐瀬氏は「第二次大戦後、日本は驚異的な経済復興を成し遂げました。一方のロシアは、ソ連の時代から餓死寸前の国民が決して少なくなかったのです」と言う。

「私は1961年から64年まで西ドイツのベルリン自由大学に留学しました。航空券が安いのでソ連の国営航空会アエロフロートをよく使ったのですが、機内食の味がひどいのです。たまらず残すと、ポーランド人の客室乗務員は『なぜ残すのか?』と質問するだけでしたが、ロシア人の乗務員は私の残飯を回収して持って帰るのです。それだけ食糧事情が悪かったわけです。食糧の確保と国民への分配は、国家にとって最も重要な役割の一つです。今のロシアは、侵略戦争に巨額の税金を投入し、国民の貧困化を推し進めています。国家としての機能を放棄したと非難されても仕方ないでしょう」

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