30年間で1万人を盗撮した51歳「斎藤果林被告」に実刑判決 裁判所は「ビデオカメラと単眼鏡」を没収したが、「治療は非常に困難」と指摘
捜査員が驚いた「膨大なデータ」
藤枝市内のPAで逮捕された「岡山市の無職の男」の初公判は、昨年1月に静岡地裁で開かれた。検察側の冒頭陳述によると、男は2020年頃、インターネットの掲示板を通じて斎藤被告と知り合い、盗撮組織に“スカウト”された。翌21年10月、撮影に関する“教育”は充分と判断したのか、斎藤被告は男に1人で盗撮するよう提案し、実行されたという(註3)。
盗撮グループがどれほど大量の動画を撮影していたかを報じたのは読売新聞だ(註1)。
《「これだけ組織的にやっていたとは」。押収した大量のハードディスクなどから続々と女性を盗撮した記録が見つかった。その量はあまりに膨大で、捜査員らは休日を返上して中身を確認した。県警幹部は、「膨大なデータで、いくら確認しても進まなかった」と話す》
盗撮だけを専門にしていたわけではなく、他にも悪質な性犯罪に手を染めていたことを伝えたのは中日新聞だ(註4)。
《県警は2021年12月~23年2月にかけ、斎藤被告を含めて逮捕者13人、書類送検3人の計16人を次々と摘発。容疑は盗撮だけでなくさまざまで、職業も国家公務員や県庁職員、有名ブロガー、医師など多岐にわたり、居住地も関東を中心に関西、九州にまで及んだ》
没収判決の意味
昨年3月2日、初公判が静岡地裁で開かれ、斎藤被告は起訴事実を概ね認めた。4月の最終意見陳述では「(盗撮が)ばれなければ被害者は生まれないという身勝手な考え方で、被害者を傷付けてしまった」と謝罪の言葉を述べた。
その様子を中日新聞は《法廷では、検察側の追及内容の誤りを淡々と指摘するなど、終始、落ち着いた様子を見せていた》と伝えた。検察側は「女性の尊厳を踏みにじる極めて悪質な犯行」として、斎藤被告に懲役3年などを求刑した。
弁護側は執行猶予付きの判決を求めたが、斎藤被告は「悪いことをしたので、実刑もしょうがないと思っている。相応の刑を望んでいる」などと発言した(註4)。
7月1日、静岡地裁は斎藤被告に「懲役2年10月、ビデオカメラ、単眼鏡没収」の実刑判決を言い渡した。ここで「没収」の一語を読み、珍しいと感じた人もいるかもしれない。そこで元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に解説を依頼した。
「没収は立派な刑であり、懲役や禁錮、罰金などの主刑と共に言い渡される“付加刑”です。刑事被告人が私物の所有権を持つのは当然ですが、検察が被告の私物について没収を求刑し、裁判所が認めると、所有権が剥奪されて国のものとなります。代表例は賄賂で使われた現金や殺人事件の凶器などです。スマートフォンによる盗撮の場合なら、被告が深く反省しているなどの理由から検察が没収を求めなかったり、裁判所が認めなかったりすると、全ての法的手続きが終了すれば、保存されている盗撮の動画や写真は全て削除された上で、スマホ自体は返却されます」
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