「マイナはデジタル弱者をはじき出す制度」 オンライン機器導入で「廃業」の病院も

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5年後、10年後に…

「2011年の東日本大震災の時は福島などの被災者の住民の情報が津波で失われてしまったことがありました。その時にマイナンバーがあれば、できることがたくさんあったはずです。ニューヨークに住む私の友人によれば、コロナ流行時、市が補助金を発表した翌日には口座に600ドルが入金されたそうです。このような世界が日本にはまだない。仕組みとしてしっかり作り上げ、5年後、10年後に“いろいろ文句言ったけど、良くなったな”と言える時代が来ることを祈っています」

 そう村井氏が熱弁する一方で、騒動は収束の気配を見せていない。6月17、18日に実施された毎日新聞の世論調査では、岸田内閣の支持率は前回調査から12ポイント下落し、33%にまで落ち込んだ。マイナカードを巡る混乱が下落に拍車をかけたのは明らか。やはり、理想と現実は違うのである。

手作業で入力

 13日には松本剛明総務相が、地方公務員が加入するすべての共済組合に、正しくマイナンバーが登録されているか総点検を行うように要請した。

 マイナカードに別人の情報をひもづけてしまった地方職員共済組合兵庫県支部の担当者によれば、

「手書きで出された組合員の申請書から券面を作るためのデータにする際、生年月日を間違えて入力してしまったのです。その後、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)にその人のマイナンバーを照会すると、間違った生年月日と一致する同姓同名の方がいて、誤ってひもづけてしまいました」

 理想的なデジタル社会の礎が、原始的な手作業というのだから、何とも空しい。しかも、この支部では、大量の個人情報の登録作業をわずかな人員で行っていた。

「今回、誤ひもづけしてしまった作業では約5900人分のデータを手作業で入力していました。その担当者は主に5名。特定の端末でしかできない手続きもありますので、臨時に増員することが簡単にできませんでした。ただし、増員がまったく不可能だったわけではなく、作業量の見込みを含め、見積もりが甘かったのは反省しているところです」(同)

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