【どうする家康】瀬名のユートピア計画に覚える違和感 ウクライナ戦争に影響を受けたか
ホームドラマ色も強い
一方、ここ1カ月(第21話~24話)はホームドラマの色合いが強かった。これも古沢氏とスタッフの意思であり、新しい大河を目指している表れに違いない。
第21話、家康は長女・亀姫(當真あみ・16)を政略結婚させようとした。信長の意向だ。嫁ぎ先は長篠城城主・奥平信昌(白洲迅・30)。信昌は勝頼の元家臣だった。信長としては結び付きを強くしたいし、家康は信長に逆らえない。
だが、長篠城周辺がとんでもなく山奥だと五徳から聞いた亀姫は、泣いて拒んだ。
「いやじゃ、いやじゃ!」(第21話)。
事前に家康から相談のなかった瀬名も難色を示し、信康も家格が違うとして反対した。
現代にも通じる結婚問題が表された。史書によると、信昌と亀姫の結婚は家康が決めたものであり、トラブルの記録は見当たらないが、この作品では泣いて嫌がる亀姫に対し、家康が頭を抱える。愉快だった。家康が今の時代の父親なら、そうなる。
第22話、23話では信康がぶっ壊れた。戦いで相手を倒し、武勇を誇ったと思ったら、信長の鉄砲隊が武田勢を殲滅すると「これは、なぶり殺しじゃ……」と震えた。一方で信長に逆らえない家康を「情けない!」と罵倒した。
鷹狩りの帰りには僧を殺した。理由について信康は「ワシに呪術をかけた」と説明したから、完全にいかれていた。ここでは子育て、跡継ぎ育成の難しさが描かれた。
壊れた信康は、「ディア・ハンター」(1978年)などベトナム戦争の傷跡をテーマにした映画を想起させた。各映画では戦争で兵士たちが強い精神的ダメージを受けたことが表された。古沢氏とスタッフは、戦いは人を不幸にするだけだと言いたかったと見る。
瀨名のユートピア計画と合わせ、戦国時代に平和を希求した人々にスポットライトを当てるという企みは面白い。それが家康による、約260年も泰平の世が続いた江戸幕府づくりにつながるのだろう。
ただし、歴史改変以外にもアキレス腱があるように思う。この作品は家康の成長物語であり、家康と酒井忠次ら家臣との群像劇である。さらに戦国武将伝であり、家康と信長のライバル物語であり、コミカルな時代劇であり、ホームドラマであるが、盛りだくさんになっている分、核となっているものが分かりにくい気がしてならない。ストーリーの縦軸が見えにくくなっているのではないか。
後半はどうなるのだろう。